「【”謎の美青年の訪問により、瓦解していく裕福な民主主義家族の顛末を描く。謎の美青年の正体は何か・・。】」テオレマ NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”謎の美青年の訪問により、瓦解していく裕福な民主主義家族の顛末を描く。謎の美青年の正体は何か・・。】
■イタリアの異才・パゾリーニが共産主義者であったことは有名である。
してみると、謎の美青年の訪問者の正体が分かる気がするが、パゾリーニは彼はキリストではないと否定している。
<物語>
・ミラノ郊外の大邸宅に暮らす裕福な一家の前に、ある日突然見知らぬ美しい青年(テレンス・スタンプ)が現れる。
何の前触れもなく同居を始めたその青年は大工場を持つ父親、美しい母親、無邪気な息子と娘、そして女中を魅了し、関係を持つことで一家の穏やかな日々をかき乱していく。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・ご存じの通り、パゾリーニは共産主義者でありつつ、ホモセクシュアルであった。特に若い青年を求めて居た。
結果として、遺作となった「ソドムの市」は余りに衝撃的な描写の数々で、今や普通には見れない。
その後、パゾリーニは悲惨なる轢死体で発見される。
犯人は、「ソドムの市」に出演した青年であるとか、パゾリーニの思想に反感を持った者たちの仕業ではないかとなっているが、今だに真相は闇である。
・今作のテレンス・スタンプ演じる見知らぬ美しい青年は、私の勝手な解釈であるがパゾリーニが自身を投影したモノではないかと思う。
退廃的で、その行動に道義はなく、裕福な一家を破滅に追い込んでいく姿。
ー 因みに、パゾリーニは極端なナルシストでもあった。-
<パゾリーニ監督作はどれも難解であるが、見る側が自由に解釈すればよいと思う。
何故ならば、映画には正解はないからだ 。
そこから自由な発想が目覚めると思うのである。
但し、パゾリーニは晩年、人道主義を踏み外してしまった。
その代償は大きいのである。
狂ったのは、今作の裕福な家族なのか、パゾリーニなのか・・。>