「化粧室の50ドル」ティファニーで朝食を ストレンジラヴさんの映画レビュー(感想・評価)
化粧室の50ドル
「バカな娘とお思いでしょう」
午前十時の映画祭14異例の夜間上映に参加。
もう今更言うまでもない、オードリー・ヘップバーンの代表作のひとつ。トルーマン・カポーティの短編小説をブレイク・エドワーズ監督が映像化した。
だが、本作がカポーティの本意だったかはよく分からない。原作を読んだわけではないが、カポーティにしては甘ったるい感じが漂うし、本来ならばホリーはマリリン・モンローが相応しいのだろう。試写を観たカポーティがひっくり返ったという噂を真とするならば、大分原作蹂躙されたことは想像に難くない。
そういった経緯もあり、僕は本作をオードリーのNo.1の作品には持ってきたくない。だが、ビジュアル面ではあらゆるオードリーの中で最も好きだ。盛り上がった髪、小さな顔を埋め尽くさんばかりの大きなサングラス、そして煙草…ジバンシィが素材本来の味を最大限に引き立たせるものだから、やることなすこと全て無茶苦茶なのにホリーのことを何故か憎めない。むしろたまらなく愛おしい。ここにヘンリー・マンシーニのスコアが加われば、オードリー、ジバンシィ、マンシーニのトリニティが完成しここまでのありとあらゆるマイナスが全て帳消しになる。
もはや古典の域に達しつつある本作。しかしながら、劇中のティファニー本店の店員の言葉を借りるならば、「目まぐるしい中でどこかホッとした思いがする」のが本作の魅力だ。
私事だが、8年前にニューヨーク五番街のティファニー本店に行く機会に恵まれた。開店前に飲み物を飲みながらウインドウショッピングをし、開店してから店内で香水を買ったのは幸福な思い出だ。店内を歩きながら、傍には"My Huckleberry Friend"ホリー・ゴライトリーの気配を感じていた。