「空を飛ぶ 牛が飛ぶ 雲を突きぬけ 渦になる。 これが本場のオクラホマ・ミキサーじゃ!!🍃🌪️」ツイスター たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
空を飛ぶ 牛が飛ぶ 雲を突きぬけ 渦になる。 これが本場のオクラホマ・ミキサーじゃ!!🍃🌪️
巨大な竜巻を追う”ストーム・チェイサー”たちの活躍を描くディザスター・パニック映画『ツイスター』シリーズの第1作。
オクラホマ州で発生する竜巻を追跡/研究する調査員ジョーと彼女が率いるストーム・チェイサーたちは、新型の観測装置「ドロシー」を携え、新たな竜巻の発生を今か今かと待ち望んでいた。
そこにドロシーの発案者であるジョーの夫ビルが、彼女との離婚を成立させる為にフィアンセと共に現れる。ジョーに離婚届へサインをするよう迫るビル。しかし、そんなタイミングで竜巻発生の知らせがチェイサーたちの下に届く。颯爽と出動する彼らに、ビルとそのフィアンセは渋々同行するのだが…。
ストーム・チェイサーのメンバーである陽気な男、ダスティ・デイヴィスを演じるのは『セント・オブ・ウーマン/夢の香り』『ハードエイト』の、後のオスカー俳優フィリップ・シーモア・ホフマン。
製作総指揮を務めるのは『インディ・ジョーンズ』シリーズや『ジュラシック・パーク』の、巨匠スティーヴン・スピルバーグ。
2024年8月現在、強い台風第10号は日本の南に位置し、西北西へ向かって毎時30㎞のスピードで進行中。中心気圧は980hpa、中心付近の風速は35m/sとされており、28日には本州に上陸するものとみられています。
そんな台風接近中の今!観る映画はこれしかねぇ!!そうそれは『ツイスター』ッ!!!🌪️🌪️🌪️🌪️🌪️
ストーム・チェイサーたちの命知らずな研究…というか蛮行を描いた本作は世界中で大ヒット。5億ドル近い興行収入を叩き出し、見事1996年の興行収入ランキングでローランド・エメリッヒ監督作品『インデペンデンス・デイ』に次ぐ第2位を記録した。
さらに、本作の影響により気象学を専攻する学生の数は大きく増加。実際にストーム・チェイサーとして活動するものまで現れた。
ロケ地となったオクラホマ州ワキタには「ツイスター映画博物館」が作られ、さらに現在に至るまで数多のパチモンB級ツイスター映画が世に生み出され続けている。まさに”ツイスター特需”とでも言うべき社会現象を巻き起こした世紀末の怪物である。
本作の目玉である秘密兵器「ドロシー」。これは1979年にアメリカ海洋大気庁とオクラホマ大学により共同開発された竜巻計測機器「TOTO」をモデルにしている。現実ではあまり効果を発揮することがなかった装置なのだが、映画の中ではその問題点を上手くカバーし、見事にミッションを達成してみせた。
ちなみに「TOTO」とは「オズの魔法使い」(1900)に登場する飼い犬の名前にちなんで名付けられた。「ドロシー」ももちろん「オズの魔法使い」からの引用である。ちなみに本作の冒頭に登場するジョーの飼い犬は、映画『オズの魔法使』(1939)に登場するトトとおんなじ犬種を用いている。竜巻業界というのは「オズの魔法使い」オマージュに溢れているのだ。
不遇のマシーン「TOTO」から着想を受け、本作の脚本を書き上げたのはご存じベストセラー作家のマイケル・クライトンと、その当時の妻アン・マリー・マーティン。
この映画がおもしろいのは、ただのディザスター・パニックの枠に収まっていないから。制御不能な大災害を前に、なす術もなく戸惑い逃げる人間たちの姿を描くのがディザスター映画の定型だが、本作の主人公たちはあえてその災害の渦中に飛び込み、それを制する方法を探し出す。この構造はディザスター映画というよりもむしろ怪獣映画。竜巻の巨大なシルエットと、全てを薙ぎ払うその破壊力はゴジラも顔負けといったところ。実際、竜巻の唸り声は動物の鳴き声をミックスして作り上げたものらしく、制作陣の間でもこれは怪獣映画だという認識があったのだろう。うーん「ジュラシック・パーク」の原作者が脚本を書くと、やっぱりなんでもモンスターものになっちゃうのね。
ちなみに、本作の監督ヤン・デ・ボンは『スピード』(1994)の後、ハリウッド版『ゴジラ』を手がける為に色々と準備を進めていたのだが予算の折り合いがつかず、あえなく監督から降板させられてしまう。実質『ゴジラ』な本作を監督した事で、彼の無念も晴れた事だろう。…そういえば、結局このハリウッド版『GODZILLA』(1998)を監督したのはローランド・エメリッヒ。ここでもエメリッヒがヤン・デ・ボンの油揚げを掻っ攫っていってるやん!
大怪獣ツイスターを作り上げたのは、史上最強の視覚効果制作会社「ILM」。『ジュラシック・パーク』(1993)でのリアルすぎるCGで世界中の度肝を抜いた彼らが新たに挑んだのは”形なきもの”の映像化。明確な実線で囲まれている恐竜に対し、竜巻とはただの上昇気流な訳でそれ自体は目には見えない。我々が目視しているのは風に舞う塵や砂の集合体なのだ。
このように、明確な線を持たないものをCGで描き出すというのは、当時の技術から考えれば途方もなく困難な事であったはず。にも拘らず、本作のCGのクオリティは驚愕すべきものであり、今鑑賞してみてもなんら違和感はない。ILMの技術力の高さには毎度度肝を抜かされる。
竜巻のクオリティは素晴らしい。だが、本当に褒めるべきなのは空。どんよりと淀む曇り空の違和感のなさである。
カラッと晴れ上がった青空が一変、前触れもなく空の色がセピアに歪む。この竜巻発生時の空のCG描写は凄まじく、どこまでがロケで撮影した本物で、どこからがCGで作り上げた偽物なのか全く判別不可能。空のクオリティが高いからこそ、そこから発生する竜巻の真実味がより増すのである。
これほどまでに素晴らしいCG。これならアカデミー賞受賞間違いなしだろう。…と思っていたのだが、まさかのオスカー像ゲットならず。えっ!じゃあ何が…?まさかヤツが…。
そうです。この年の視覚効果賞を受賞したのはあの『インデペンデンス・デイ』。2度ならず3度までもエメリッヒにしてやられたヤン・デ・ボン。もう掛ける言葉も見つかりませぬ…。
CGのクオリティの高さが本作の面白さに直結しているのは言うまでもないが、実はこの映画がかなりのリアリティ志向で作られている事も忘れてはならない。爆発、氷、風、大破壊と、実物で再現可能なものに関しては出来る限り本物を使用しているのだ。
例えば冒頭でジョーの父親が吹っ飛ばされるのだって、あれ本当にワイヤーを引いて役者さんをぶっ飛ばしているし、クライマックスでのジョーとビルが竜巻に呑まれるシーンでは巨大な車輪のようなものに役者2人を入れ、徐々に回転させる事で宙吊り状態を作り出し、それを逆転させることにより空へと巻き上げれる2人を表現してみせた。
ワキタ大破壊に関してはセット&現地の空き家を本当にぶっ壊すという荒技を披露し、車が竜巻に巻き上げられる描写では宙に舞うのはCG、落下して爆発するのは実車と場面場面で技術を使い分けている。
お気に入りは車が転がってきた家を突っ切るシーン。家の転がりをCGで描いておいて、車が突っ込むところからは実写に切り替え家の中を実際に爆走させる。あの緊迫した状況なのにクスリと笑える面白シーンはこうして生み出されているのである。
このように力技とアイデアを駆使し、実写とCGを最適なバランスで使い分ける。これにより生まれるリアリティこそが本作のキモなのである。
ま、流石に空を舞う牛さんに関しては全CGなんだけどモー🐮
竜巻やCGだけでなく、ご機嫌なストーム・チェイサー軍団にも着目したい。このチェイサーたち、一応は竜巻研究のために危険を冒しているという体裁をとっているのだが、ぶっちゃけただのアドレナリン・ジャンキーたちである。話し声はデカいしカーステレオは爆音だし、とにかく喧しい迷惑集団。
ただ、竜巻の起こるところがあれば場所も時間も関係なく車をぶっ飛ばす彼らの生き方のなんと楽しそうな事か。ジョークを言い合いながらたらふくメシを掻っ込む。こんなん完全に『天空の城ラピュタ』(1986)のドーラ一味の実写化ですやん。そりゃ男の子ならみんなコイツらに憧れますやん。そりゃストーム・チェイサー目指しますやん。
竜巻の迫力はもちろんだが、魅力的な登場人物の数々が本作を名作たらしめているのは間違いないだろう。
まぁぶっちゃけ、ジョーとビル、そしてそのフィアンセであるメリッサの三角関係の描き方については噴飯物の酷さ。視聴者の目線としてメリッサという竜巻素人をメンバーに加えたかったというのはわかるのだが、あまりにも彼女の描かれ方がおざなりで、この3人の恋愛には1ミリも心が動かされなかった。ラジー賞で「興行収入1億ドル以上作品限定最低脚本賞」受賞という不名誉を得たのも納得である。
が、そんなもんはこの映画においては枝葉にすぎない。豪快なキャラクターと壮絶なディザスター、圧巻の映像に大いに楽しませていただきました♪一昔前の大味エンタメ映画ってやっぱ最高やな✨
なお、ジョーダン・ピール監督作品『NOPE/ノープ』(2022)はほとんどこの映画のリメイク。この映画を「意味わからん」とか言ってる人は本作を一度観てみると良い。モンスター版『ツイスター』、それ以上でも以下でもないんだから難しく考えてはいけない💦
鑑賞記録は必要ですよね。私も時間の無駄だったなぁという作品がいくつかありますが、どう無駄だったかの感想こそ、貴重な資料ですしね。
みなさんのレビューは本当に貴重だし、これから観る方の参考になりますから、たなかなかなかさんの次のレビューも楽しみにしています。
そうなんですよ、届いてほしくてコメントしても、この作品観ないと、なかなかレビュー開けないですもんねー😩…
私も思ったより面白かったなと思いましたが、このレビューでこの作品がB級映画じゃないのがわかりましたwww