「痛烈な風刺と色褪せぬメッセージ」独裁者 しゅうへいさんの映画レビュー(感想・評価)
痛烈な風刺と色褪せぬメッセージ
NHK BS「プレミアムシネマ」で鑑賞(字幕)。
小生、恥ずかしながら、チャップリンの映画を観るのは初めてであった。本作のイメージとしてはナチス・ドイツへの風刺がこめられていると云うことで、笑いが控え目の作風と思っていたが全くそんなことはなかった。冒頭から笑いの坩堝。チャップリン流のドタバタとしたコミカルな笑いの乱れ打ちだった。ザ・ドリフターズのコントみたいだなと思った。ドリフのコントの源流はチャップリンだったのかと、ちょっとした発見に嬉しくなった。
チャップリンがユダヤ人理髪師と独裁者のひとり二役で、ふたりのシーンが交互に描かれていく。
記憶を失った理髪師の日常が独裁者の横暴によって不穏を帯び、どんどん蝕まれて悲劇を呼び込む。
第一次世界大戦が終わったのも束の間、再び戦争の影が忍び寄り、ユダヤ人は迫害されてしまう。
言わずもがな、名前は変えてあるものの、独裁者はヒトラーのことで、ヒトラーを徹底的に風刺、もとい、おちょくっている。ヒトラーの特徴的な演説での話し方、身振り手振りのモノマネが絶品だ。
コミカルに誇張しているが故に浮かび上がる非道な行いに、目を覆いたくなった。史上最悪の独裁者に、エンターテインメントで戦いを挑んだチャップリンの勇気に心からの敬意を表したい。
ラストの演説シーンはあまりにも有名で、今さら何も言うことはないが、演説にこめられたメッセージは永遠普遍であると思う。あの頃から果たして世界は変わっただろうか。もしもチャップリンが生きていたら、今の世界をどう思うだろう。
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