「反ファシズムを貫くチャップリンのヒューマンコメディ」独裁者 chakurobeeさんの映画レビュー(感想・評価)
反ファシズムを貫くチャップリンのヒューマンコメディ
1940年10月にアメリカで公開された大傑作であり、かつ、歴史的大問題作であった。 前作の「モダンタイムズ」で社会性を色濃くした人間喜劇を作り上げたが、この「独裁者」では、政治性(反戦思想)まで踏み込むこととなった。これらのことから、チャップリンも大戦後の米国における「赤狩り旋風」に巻き込まれて追われるように米国を去り、スイスに移住することとなったのである。
日の出の勢いのナチスドイツが欧州各地で勝利し続け、米国が参戦を躊躇する中、チャップリンは一人で命をかけてナチスドイツに挑戦状を突きつけたのである。映画の中では、チャップリンがヒットラーとおぼしき人とユダヤ人の床屋さんの二役を演じているが、深刻なユダヤ人差別問題や戦争の不合理性がコメディーの流れで描かれている。奇しくも、チャップリンとヒットラーは同じ年月生まれであった(1889年4月)。 チャップリンの自伝(これもとても面白い本でした)の中で語られた言葉だったろうか、「私が、もしアウシュヴィッツの悲劇を知っていたら、このような映画は決して作れなかった」は、とても印象に残った。最後の場面では、映画としては全く異色の、自由と博愛を訴えた有名な名演説がチャップリンの映画としては初めての生の言葉で発せられた。映画の結末としては、若干の疑問点もなきにしもあらず、だけれども、この最後の演説は非常に感動的で圧倒される。
コメディーとして特に面白おかしかったのは、ハンガリー舞曲第5番に合わせて散髪するチャップリン、コイン入りケーキの食卓シーンなどなど、抱腹絶倒の名傑作場面が数多くある。
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