「ソ連の支配批判を世界に届け続けてきたワイダ映画の原点のような作品に…」地下水道 KENZO一級建築士事務所さんの映画レビュー(感想・評価)
ソ連の支配批判を世界に届け続けてきたワイダ映画の原点のような作品に…
少し前、ワイダ監督の「カティンの森」と
「灰とダイヤモンド」を観たあと、
抵抗三部作のひとつのこの作品を
図書館で見つけ、ワイダ関連で再鑑賞した。
絶望的な描写が続いた。
救いようのない地獄絵図とは
このことだろうか。
全編救いのないような展開だが、
私は画面から目を離せなかった。
後でセットだと知る作品の半分以上を占める
地下水道の場面での
ポーランド兵士の死への彷徨は、
リアリティーに溢れ、
あたかも私を同時代の目撃者に
誘うような見事な演出だった。
このドイツ軍に対する蜂起に
勝とうが負けようが、
ポーランドがソ連の支配下に入る運命だった
と考えると、
ポーランド国民に同情を禁じ得ないが、
ワイダ監督は
ソ連の検閲を巧妙にかわしながら、
「灰とダイヤモンド」から「大理石の男」
「鉄の男」等々の作品で、
巧妙にソ連の支配批判を
世界に届け続けてきたことには
頭の下がる思いだ。
私にとっては、抵抗三部作の「世代」を観る
機会は失われてはいるものの、
大国に蹂躙され続けてきた
郷土への想いをヒシヒシと感じられる
ワイダ映画の原点のような作品に思えた。
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