「メロディのさりげない一言が胸に突き刺さる永遠の名作」小さな恋のメロディ よねさんの映画レビュー(感想・評価)
メロディのさりげない一言が胸に突き刺さる永遠の名作
11歳のダニエルは端麗な容姿の美少年だが父親が読んでいる新聞にマッチで火をつけたり部屋でヌード写真を模写したりする微妙にませた少年。ダニエルはやんちゃな同級生トムとつるんでやりたい放題の放課後を謳歌していたが、教室でバレエの練習をしている女子達の中に可憐な少女メロディを見つけてしまい・・・からのストーリーを知らない人は令和生まれだけじゃないでしょうか。
凡そ40年ぶりの鑑賞なのでさすがに記憶が風化していてラストシーン以外は断片的な映像が脳裏に残っていた程度。それ故に初めて観るかのような新鮮さに彩られた至福の2時間弱でした。正直今の感覚からすると物語が直球過ぎるし、本作以降数多の映画やドラマで散々模倣され尽くした展開は相当古臭い。しかしそれは郷愁を容赦なく誘い、可憐さと大胆さが共存するメロディの途方もない美しさに吸い寄せられていくダニエルとまるで心臓を共有しているかのように物語に引きずり込まれ、ダニエルの焦りやトムの苛立ちと贖罪が胸の内でのたうち回る。ここまでのめり込めるのは昭和の昔に思春期を置いてきた者だけが味わえる悦楽なのかも知れません。
何もかもが美しいですが、特に墓場でのデートでメロディがダニエルに放つ一言にさめざめと泣きました。年齢をいくつ重ねてもこういう身も蓋もない恋物語に胸が灼かれます、本当に今まで生きてきてよかった。
ちなみに劇場売店的でパンフレット代わりに買ったスクリーン・アーカイブズが凄いです。半世紀前の時代を垣間見る貴重な文献の復刻ですが、ここに詰まっている写真はどれも美しいし、どの記事もキラキラと輝いています。特筆すべきは故荻昌弘先生のレビュー。半世紀前の日本語が今のそれと相当異なることにビックリするわけですが、先生は映画に興奮し過ぎてもう最初から最後まであらすじを全部書いてしまってます。ネタバレなどという言葉もなかった時代のおおらかさに眩暈がしました。