ダントンのレビュー・感想・評価
全2件を表示
フランス革命の真っ暗な現実
(1982年封切り時の記憶です、恐縮)
きたる2025年1月に「ベルサイユのばら」劇場版が公開されるそうです。楽しみ。TVアニメのベルばらではフランス革命の開始までが描かれ、オスカルの崇高な死とともに革命=人民の時代という希望感がありました。しかし‥。
本作ではルイ16世もマリー・アントワネットも処刑された後の状況が描かれます。革命政府ができても、飢えと対外戦争で国内は暗い。何より、公安委員会・革命裁判所など権力を握った奴らが恐怖政治を布いて国民を圧迫している。ある日の公安委員会に遅れてきた委員長ロベスピエールが「諸君、遅れて申しわけない」と言うと、他の委員が「君の言い方は国王が閣僚に呼びかけているようだ」と皮肉を言う。
あくまで革命を推進しようとするロベスピエール、反対するものは反革命としてどしどし処刑してゆく。もとは一緒に革命をやってきたダントンは革命の行き過ぎ・恐怖政治をとどめようとする。はじめ、ダントンを弾劾する委員たちに対してロベスピエールはこれをかばう。なんとか関係修復を模索するも、ミゾは埋まらず、ついにダントンとその仲間は逮捕され、裁判所とは名ばかりの暗黒裁判に。火を噴くようなダントンの舌鋒に裁判官もたじたじとなるが被告の発言禁止というおよそ民主主義とか正義とかとは真逆のことが為される。
ギロチンで被告たちの首が落とされると、籠に首が落ち、どす黒い血がじゃばじゃばっと断頭台下に落ちるさまがぞっとします。その直前、荷車に乗せられて刑場に送られるダントンが「君もやがてこうなる」と言ったそのとおり、そのわずか2か月後にロベスピエールも処刑されるのが史実で(映画ではそこまでは描かれない)、フランス革命のけして輝かしいものではない、真っ暗な面をリアルに描いています。A・ワイダ監督よかった。役者の演技もよかった。ただ、邦訳がちょっとこなれていないと思えた。
ラストシーン、ロベスピエールの下宿先の家主女性が子供を行水させている。たらいに裸で立たせて寒そう。ロベスピエールを崇拝する女性は子供に「人権宣言」を暗唱させています。あれ結構長くて難しいんですよね、私たちはサワリしか知らないですけど。子供は当然つっかえますが、女性は許しません。寒くて(タオルをくれと)手をだすのに、その手をピシャリとぶちます。人権宣言?皮肉このうえない情景でした。
ベルばら公開に合わせて本作もリバイバル上映してほしい。
背景がわからない茶番裁判劇
総合:60点
ストーリー: 55
キャスト: 80
演出: 75
ビジュアル: 75
音楽: 65
フランス革命の専門家というには程遠い位置にいる私にとって、何が起きているのか背景がよくつかめない。革命後の混乱を恐怖政治による権力掌握で乗り切ろうとする委員会の者達による陰謀。国民の英雄とみなされてる(委員会にとって)邪悪なダントンなる人物を逮捕し、自分たちの計画通りに葬ろうとして延々と続く茶番の裁判。証拠もないから裁判ではなくて国民の感情に訴えることにより状況を覆そうとするダントン。
それはいいのだが、あまり何が言いたいのかわからない。この茶番の裁判劇を長々と見せられても、裁判自体にたいした意味があるとも思えない。結局歴史の裏の権力闘争と陰謀に終始しているだけで、あまり物語に魅力を感じなかった。フランス人ならば歴史背景がわかっていて面白いと思うのかも。
良かった点としては出演者たちの白熱の演技。熱弁を振るい声も枯れていくダントンを演じるのはジェラール・ドパルデュー。「さよならモンペール」の人のいいお父さん役の俳優だが、随分と役柄が違ってて熱演。私は知らない俳優だが、冷静な敵役ロベスピエールを演じるヴォイツェフ・プショニャックの、謀略も必要悪と割り切ってことを進める神経質で冷静な演技も対照的に面白い。重圧に潰されそうになる彼の苦労も忍ばれて、悪人やるのも大変だとわかる。当時の時代の服やセットもなかなかのもの。
全2件を表示