「ホントに1968年の作品?!」戦うパンチョビラ TRINITY:The Righthanded Devilさんの映画レビュー(感想・評価)
ホントに1968年の作品?!
メキシコ革命を舞台に実在した英雄パンチョ・ビラ(ビリャ、ビージャなどとも)を主人公にした作品。
はっきり言って何もかもが古くさい印象。
1968年といえば、前年始まったアメリカン・ニュー・シネマのムーブメントのただ中で、キューブリック監督の『2001年宇宙の旅』もこの年。
古く感じさせる要因の一つは、リーを演じた同年58歳になるR・ミッチャムの配役にもある。
ベテラン俳優が演じるいい歳した中年男が親子ほど年齢差のある娘を口説いたり恋に落ちるパターンは、伝統的西部劇が飽きられた一因といわれているのに、また同じことやらかしちゃってる。
リーと恋仲になるフィーナはメキシコ人なのに眼だけは青い。これも先住民役に白人を起用した際によく見られるハリウッドの伝統的手法。違和感ないのか?!
彼女は初対面の白人相手に簡単に体を許すし、男の方は革命軍も反乱軍も無闇に人を殺しまくるわで、人種的偏見が丸見え。
ベトナム戦争やってる時にメキシコ革命描いてるのに…。
この作品、ほかの出演者がY・ブリナー、C・ブロンソン、F・レイ、F・ウォルフにブロンソンの愛妻J・アイランド、脚本S・ペキンパー(共作)で音楽がM・ジャールとメンバーはやたらと豪華。それだけに、世界三大珍味をトッピングした期限切れの冷凍タコスみたいに感じてしまう。
当時は世界的に大ヒットしたマカロニ・ウエスタンの影響をハリウッドが受け始める頃(アメリカン・ニュー・シネマの誕生も、その一環だと思っている)。それだけに、製作年も会社も同じ(パラマウント)S・レオーネの『ウエスタン (Once Upon A Time In The West)』とどうしても比較したくなる。
同作にも謎多きガンマン役(ハーモニカ)で出演したブロンソンは、今回ビラの副官フィエロ役で登場。手当たり次第人を殺すがハーモニカのようにバックボーンが明かされないのでまったく共感出来ず、寒々しい印象しか受けない。おまけに彼が尖鋭化し過ぎてブリナー演じるビラの影がやたら薄い。
そのうえ、過激な映像のわりに「ペキンパーの脚本ちゃんと使ったの?」と言いたくなるくらい、カタルシスを感じない。
結局、新しい価値観に挑む姿勢に乏しく、マカロニ・ウエスタンからは残酷描写を模倣しただけに終わっている。
若い頃、ジョン・リード(映画『レッズ』〈1981〉の主人公)のルポルタージュやC・フエンテスの小説『老いぼれグリンゴ』(1989年に『私の愛したグリンゴ(邦題)』として映画化)を読んだ経験からメキシコ革命に興味があり、同じ時代を扱った『革命児サパタ』〈1951〉も名作だったので期待が大きかっただけに残念。
この映画見たあとにS・コルブッチの『豹/ジャガー』〈1969〉観たら、名作通り越して映像芸術にみえるかも。
NHK-BSにて視聴。