黄昏(1951)のレビュー・感想・評価
全8件を表示
人生の黄昏
何とも終わった後の後味の悪さ。
映画にではなく、世紀の大スター、ローレンス·オリビアを役とはいえあそこまで地に落とした演出には圧巻。
白黒映画ながら、あの時代の妻帯者の命懸けの恋も現実にはシビアで悲劇を呼ぶと。
知らしめたような絶望的ラストシーンは、寧ろ衝撃的でした。
最近の三流よろめき不倫映画に先制パンチを、食らわせるような内容に最後まで胸ぐらを捕まれた感じです。
悲恋というより、まさに悲劇。
地位も名誉もお金もある中年の紳士が、田舎から出てきた若い女に人生のすべてを捧げて、身を滅ぼす映画だが。
勘違い?からローレンス.
オリビアを見捨てた彼女は逆に女優として地位も名誉も掴む。生きる為ホームレスに成り下がり施しを受ける為彼女に会いにいく姿は観ていて痛々しかった。しかし結局最後まで彼女に恨み言も、施しも受けずに。
ワンコインだけ、掴み立ち去っていく男の姿は最後まで一人の女にプライドをかけて愛を貫く
誇りを感じた。
救えない程の悲劇映画でありながら。
男の潔さと、女のエゴイストを描いた秀逸。流石あの
「ローマの休日」のウィリアム.ワイラー監督映画
「探偵物語」と「ローマの休日」の間の作品にしては…
NHKBSで放映があり、
監督が巨匠ウィリアム・ワイラー、原作が
昨年改めて鑑賞した「陽のあたる場所」の
セオドラ・ドライサーと知って初鑑賞。
それにしても、
こんな惨めな役柄のローレンス・オリヴィエ
をスクリーンで見たことはあっただろうか。
彼は時代劇のヒーローだったり、
富裕世界を代表するような役柄が多かった
イメージなので驚きの配役だった。
そして、前半は女性、後半は男性が主役との
イメージの面白い構成の作品でもあったが、
しかし、何かしっくり来ない鑑賞。
終盤のセリフやラストシーンに
なんとも言えない余韻があったものの、
多分に、特に前半の展開に
不自然さが溢れており、
それが最後まで尾を引いてしまった感じだ。
二人の男性がヒロインに夢中になるのは
多分彼女がとびっきりの美人だったから、
としか思えない展開だが、だとしたら
それまでの彼女の人生は違っていたはず。
またセールスマンと同棲する経緯、
支配人の窃盗等々、
御都合主義的な展開に気勢を削がれた。
「陽のあたる場所」は
見事な原作でもあったように感じたが、
この作品では何かと
リアリティを感じ取れず、
またウィリアム・ワイラーの演出も、
せっかくのローレンス・オリヴィエと
ジェニファー・ジョーンズで盛り上げた
ラブシーンだけではカバー出来ないままに
完成させてしまった印象だ。
この映画は、名作「探偵物語」と
「ローマの休日」の間の映画だが、
もう一つ体制が充分では無かったの中で
撮られた作品だったのだろうか。
日本初上映当時、
そんな展開の不自然さからなのか、
キネマ旬報では、評論家のどなたからの
1票も獲得出来なかったのが
納得の印象ではあった。
浮気に走るどうしようもない話
ジェニファージョーンズ扮するキャリーは、田舎からひとりシカゴに出て来た。工場をクビになり途方にくれたところ紳士が助けてくれた。妻になったはずなのに何故ローレンスオリビエ扮するジョージハーストウッドが誘うのか? キャリーもすぐ浮気に走る。どうしようもないね。
『ライムライト』を思い出した
不倫する男の末路、と捉える向きもあるかもしれない。
しかし、人を愛するとは何なのか。そこには現実が大きく立ちはだかる。
全てを捨ててまで人を愛することの、現実面の厳しさを感じる。
元嫁が家を売却するからサインが欲しいとアパートに訪ねてきた時、
まだ離婚してないことを知ったキャリーは取り乱し、
ジョージは仕方なく示談金も無しにサインしてしまう。
人生の転落を続けるジョージがキャリーにご飯代の施しを願おうとしたラスト、
キャリー財布ごと渡し、再び2人の生活を望むが、彼は、小銭だけをつかんで去る。
「黄昏」?
「黄昏」という題には疑問が残る。「生きてー会おう」という題の方がピッタリしている。最後のENDシーンですが、ハーストウッド(ローレンスオリビエ)がガスの元栓を開けますー死にたい。でもガスの元栓を閉めますー生きよう。そしてドアを閉めて小銭を握りしめながら出て行きます。ハーストウッドは今のままでは一緒になれない、一人前の姿で会いたいし、一人前に生活できれば一緒になろう。そういう決心があったシーンです。一度は彼女をさらった責任があります。だからこの姿では一緒になれない。彼は彼女にいいます。「物乞いに来たんだ」ーこの言葉は重要です。今度会う時はこんな姿じゃないと意味しています。ウィリアムワーラーの名作です。すごい深みのある映画です。
人生の黄昏とファムファタルの出会い
疑い様の無い傑作中の傑作
ウィリアム・ワイラー監督の凄さに今更ながらに脱帽する他有りません
原題は単に主人公の名前に過ぎません
しかしそれを黄昏とつけた邦題の格調の高さはどうでしょう
もちろん黄昏とはジョージのことです
彼は仕事も財産も子供も何もかも充実しています
それ故プライドも高く、初老となりこのまま老いていくののみの日々を受け入れ難い男なのです
しかし日は登り沈むものなのです
日が沈み辺りには夕闇が立ち込め始めますが、空はまだ明るさを残しています
それが黄昏です
正にジョージそのもののことです
ジェニファー・ジョーンズ演ずるキャリーは主人公のようで、その実本当の主人公は名優ローレンス・オリヴィエが演じるジョージなのです
出演時45歳、しかしどうみても60歳手前にしか見えません
見事に人生の黄昏とは何かを演じ、黄昏時にさしかかった男の焦りと足掻きをこれでもかと言うほどにみせてくれました
そして本作は男の人生を破滅させるファムファタル=運命の女に、人生の黄昏時に出合ってしまった男の末路をこの名優の演技で描き切っているのです
キャリーは普通の女性に過ぎません
確かにスターになるだけの美貌を持っていますが、一目見ただけで男の人生を破滅に導くほどのものではありません
しかし黄昏の中にいるジョージに取っては、彼女はファムファタルたる破壊力を持つ美貌に見えるのです
その微妙なところをジェニファー・ジョーンズは実に説得力のある容姿と演技で表現してみせてくれました
そしてウィリアム・ワイラー監督の演出の的確さにも感嘆するばかりです
息子を遠目に見るだけで声も掛けれずにキャリーとの安アパートに戻ったジョージは、もぬけの殻の部屋に呆然とします
部屋に残されていた目覚まし時計の秒針の音だけが虚しく大きく聞こえるのです
君はまだ若く時間がある
君は君の可能性を追求しなさい
しかし自分はもはや若くない
君と同じ時を生きて、共に可能性を追求する時間は自分にはもう残されていない
だからこれで良いのだ
彼の胸に去来するその思いを、監督はこの時計の秒針の音だけで私達にそれを告げさせているのです
ラストシーンもまた素晴らしい演出でした
ガスの火を止めて、再度コックを開いてガスだけを流がします
しかし、結局またコックを閉めてジョージは去っていくのです
日は静かに沈み、やがて黄昏は空の残照と共に消え、闇の中に全てが飲み込まれるのみなのです
胸がいたい。
これぞ「無償の愛」。
名監督、名優の作品。時代も世相も違いますが、世の中、人生はどうなるかわからず、人の心も変わっていきます。「愛」とは?考えさせられます。ずーとずーと忘れられない映画です。
本当に胸がいたいです。
全8件を表示