劇場公開日 1953年10月15日

「「探偵物語」と「ローマの休日」の間の作品にしては…」黄昏(1951) KENZO一級建築士事務所さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0「探偵物語」と「ローマの休日」の間の作品にしては…

2022年1月7日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

NHKBSで放映があり、
監督が巨匠ウィリアム・ワイラー、原作が
昨年改めて鑑賞した「陽のあたる場所」の
セオドラ・ドライサーと知って初鑑賞。

それにしても、
こんな惨めな役柄のローレンス・オリヴィエ
をスクリーンで見たことはあっただろうか。
彼は時代劇のヒーローだったり、
富裕世界を代表するような役柄が多かった
イメージなので驚きの配役だった。

そして、前半は女性、後半は男性が主役との
イメージの面白い構成の作品でもあったが、
しかし、何かしっくり来ない鑑賞。
終盤のセリフやラストシーンに
なんとも言えない余韻があったものの、
多分に、特に前半の展開に
不自然さが溢れており、
それが最後まで尾を引いてしまった感じだ。

二人の男性がヒロインに夢中になるのは
多分彼女がとびっきりの美人だったから、
としか思えない展開だが、だとしたら
それまでの彼女の人生は違っていたはず。
またセールスマンと同棲する経緯、
支配人の窃盗等々、
御都合主義的な展開に気勢を削がれた。
「陽のあたる場所」は
見事な原作でもあったように感じたが、
この作品では何かと
リアリティを感じ取れず、
またウィリアム・ワイラーの演出も、
せっかくのローレンス・オリヴィエと
ジェニファー・ジョーンズで盛り上げた
ラブシーンだけではカバー出来ないままに
完成させてしまった印象だ。

この映画は、名作「探偵物語」と
「ローマの休日」の間の映画だが、
もう一つ体制が充分では無かったの中で
撮られた作品だったのだろうか。

日本初上映当時、
そんな展開の不自然さからなのか、
キネマ旬報では、評論家のどなたからの
1票も獲得出来なかったのが
納得の印象ではあった。

KENZO一級建築士事務所