劇場公開日 1952年10月1日

「若い頃の、主人公の彼女への別れの言葉への違和感が思い出されたが…」誰が為に鐘は鳴る(1943) KENZO一級建築士事務所さんの映画レビュー(感想・評価)

2.0若い頃の、主人公の彼女への別れの言葉への違和感が思い出されたが…

2021年12月4日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

NHKの放映戦略か分からないが、
「100分de名著」で
ヘミングウェイスペシャルが放映された後に
この作品の放映があったので
数十年ぶりかで鑑賞。
劇場ではなく多分以前もTVだったと思うが、
キスに鼻が邪魔になるとのエピソードや
ラストの主人公の機銃掃射の映像を
印象的なシーンの映画として記憶していた。

全般的には山岳ゲリラのリーダーの
動きに振り回される部分や、
別のゲリラグループの登場と戦い・全滅の
エピソードの必要性が分からなく、
総じて作品自体が冗長に感じ、
原作がどうなのかは分からないが、
上手い演出とは思えない作品だった。
キネマ旬報では誰からの1票も
入らなかったのは当然に思えた。

全般的には今回も同じ印象だったが、
特に、若かりし頃に違和感を感じたのは、
ラストで主人公の彼女に語る言葉だった。
確かに涙誘う台詞ではあるが、
「いつも君と一緒だ」や
「離れても心はひとつだ」では、
彼女の彼への想いが足かせとなって
彼女の将来の幸福獲得への
障害になるばかりではないかと、
若気の至りで当時は反発を覚えた。
ここはむしろ「君のことはもう眼中に無い」
とか、自分を忘れさせるための突き放す
言葉の方が彼女のためになるはずだ、と。

しかし、今回は迷いが生じた。
どんな酷い言葉だろうが、
それが彼の真意ではないと
彼女は悟るだろうし、
彼の優しい心に触れた彼女が、
それを糧に力強く生きていく
とも想像出来たので。

若い時とは異なる、
老齢の境地の成せる感性だったろうか。

KENZO一級建築士事務所