「虚無感ありあり」太陽はひとりぼっち mittyさんの映画レビュー(感想・評価)
虚無感ありあり
イタリアの巨匠、ミケランジェロ・アントニオーニの「愛の不毛作」の最終章。
といっても、ミケランジェロ・アントニオーニは初鑑賞でして、万人にお薦めするようなエンタテイメントではなく、私自身も少々、退屈しました。それもそのはず、主人公のビットリア(モニカ・ビッティ)は虚無感で出来たような「けだるい」女性でして、けだるさが伝染してしまいそうでした。しかし、この人、メイクしなくても十分に美しいだろうなあと思えるナチュラルビューティーの持ち主。
物語の最初は男女の別れ話から始まりますが、これまた、歯切れが悪いです。というのも女性には明確な理由なく別れたいようで、ほとんど一晩寝ずに夜が明けたようでした。
その後、喧々がくがくとした証券取引所の様子が長く映されます。そこに登場するデーィラーのピエロ(ドロン様)がめちゃかっこいいのですが、妙に忙しい人間。お金で人生を決めるような軽薄さみたいなものを持ち合わせております。後にピエロはビットリアとおしゃべりをしている時に酔っ払いに車を盗まれて、車は酔っ払いとともに海に落ちたようでした。車の修理費用のことしか気にしないピエロ。割り切った合理主義です。
何事にも喜びや感動、特に「愛」を感じられない女性。作品は1962年だから昭和30年代。しかし、この虚無感や漠然とした不安感、女性ならば誰でも若い時はよく似た感情に見舞われたはず。それほど古さを感じさせないです。
俯瞰する映像が多く、そして窓がよく出てきます。意味はよくわかりませんが、人と人との「距離感」を表しているように感じました。
ピエロ「なぜ僕と結婚しない?」
ビットリア「わからない」
ピエロは「結婚しないなら何故会う?」
ビットリア「あなたのことをもっと愛したくて」
少しは二人の行き先に灯りがともっていくのかと思ったけれど、
ラストは無機質な郊外の様子や住宅などが映し出されて、二人が出会うシーンはありませんでした。
株が大暴落して、5000万失った男性、薬局で精神安定剤を買い、外カフェでミネラルウォーターを注文して飲む。そのときに書いた落書きをビットリアが男が去ったあと、取り上げる。お花の絵が描いてあった。このシーンが印象的。
退屈だと書いてしまいましたが、結構、描写が細かくて、考えさせられるところもありました。