ダーククリスタルのレビュー・感想・評価
全3件を表示
黒水晶を元に戻し、世界を取り戻す話
感想
「セサミ・ストリート」、「スターウォーズ帝国の逆襲」のヨーダ役で名を馳せるフランク・オズと名人形師ジム・ヘンソンを中心に創作された異世界スペクタクルファンタジー。
スターウォーズが世界的に認知されたおかけで制作する事が可能となった作品でストップモーション以外の人形特撮映画作品では間違いなく当時最高峰の技術水準の手法を用いて制作された作品。2019年にリブートされ前日譚が制作されてはいるが、VFX全盛の現在ではここまでのクオリティのSFX作品はもう創る事が出来ない。貴重なものの質感と雰囲気が映像に収められていて今観返しても遜色を感じる事無く感動する。
想像をはるかに超えて魅せる異世界感とカラー撮影の美しさと妖精である主人公をはじめ、数々のキャラクター設定がエクセレントに素晴らしく、映画という総合芸術領域の一特撮技術の視点としては極致に達している作品。
本作の特筆すべき点
①本作は劇中全て当時の最先端のアニマトロニクス技術と一部操演のSFXでVFX制作はILM。脅威の美術造形は細部まで素晴らしく他に類を見ない
②コンセプトデザイン:ファンタジーアート界の今や巨匠である妖精アートデザインの第一人者ブライアン・フラウドか担当。キーラのキャラクター設定が素晴らしく初見時とても感動した。
③撮影:カラー撮影のパイオニアでありイギリス映画界の重鎮、撮影監督オズワルド・モリス最後の作品である。本編の最後に観られる調和の戻った世界のクリスタルパレスを望む全景のカラーの色調が本当に素晴らしい映像描写で大感動する。
④音楽:トレバー・ジョーンズ 陰と陽の融合によるバランスが保たれる世界とその世界に生きている者の喜びや悲しみ、生きとし生けるものに注がれる神の恩寵のような想いを感じる美しい旋律と雄大な物語の世界観を素晴らしい楽曲にして表現している。演奏はロンドン交響楽団
物語
想像しえない別の時。驚嘆すべき不思議な別世界。スケクシスとミスティクスは元は一つのウルスケクスという種であった。彼らは全ての世界の調和を司る者たちであり、世界は三千年間、様々な色彩を放つ楽園世界を創り平和を保ち続けていた。世界の安定を保つ作用を司るダーククリスタルが割れ散り、ウルスケクスは陰の賢者スケクシスと陽の賢者ミスティクスに分かれ、世界はスケクシスの支配する荒涼とした暗黒世界となってしまう。
それから千年間が過ぎ「三つの太陽がひとつに輝くとき分裂し、破滅したものたちはひとつに統べられる。ふたつをひとつにするのは ゲルフリンの手によって、あるいは無なり。」の預言の通りこの世界の恒星の大合致がまもなく訪れるとして恐れを持った陰の賢者スケクシス族はガーシム達を操り、ゲルフリン族を抹殺する行動を起す。最後のゲルフリンと思われたジェンは陽の賢者ミスティクスに匿われ一命を取り留め育てられる。
成長し青年となったジェンはミスティクスより欠けたクリスタルは離れ森に棲む天体観測を司る魔女オーグラの元にある事を知る。クリスタルパレスにあるダーククリスタルに欠片を戻した時、世界はまた元に戻る事を知ったジェンはオーグラに逢い、クリスタルの欠片を手に入れる。更にポッド族に育てられ、美しく成長したゲルフリンのキーラとの運命的な出逢いを果たす。恒星の大合致が近づき、世界が一つになる時が来る。勇気と知恵、キーラの協力を得てクリスタルパレスに苦難の大冒険を経て辿り着くが、キーラはガーシムに捕らえられてしまう。
大合致の瞬間キーラは命を懸けてクリスタルの欠片をジェンに渡し命を落とす。ジェンも愛するものの為に命を懸けてクリスタルに欠片を合わせる。その時賢者の種の再融合が発生、ウルスケク族が再び正融合種として復活を遂げると同時にキーラの命もその融合エネルギーにより甦りを果たす。ウルスケク達はゲルフリンの二人にこの世界をクリスタルと共に守り続ける事を誓わせて別世界に昇華していく。
1983年4月 日比谷スカラ座で初鑑賞
貴重なる映像遺産と思うので
⭐️5
活き活き
40年以上前の作品を、多分30年以上ぶりに、目黒シネマにて。
ストーリーは他愛もないものながら、ジム・ヘンソンとフランク・オズが創造したクリーチャーたちがCG以上に活き活きして見えることにあらためて驚愕。スクリーンで観られて良かった…
独特のキャラデザインをどう見るか・・
本作は脚本より先に世界観づくり、人形劇でどこまで実写に迫れるかの可能性探求から始まったそうです。
原案・製作・監督のジム・ヘンソンはマペットの生みの親、高校時代から人形劇の人形作りにのめりこんだようです。当時の人形劇と言えば木彫りの操り人形だったものを発砲ゴムで造形しロッドで操るように考案、「人形にも生命と感性が必要」というのが彼のモットーでした。CM製作やセサミ・ストリートで成功し映画にも進出しましたが究極の人形劇を作るのが夢だったのでしょう。
一方、子供に見せるにはグリム童話のように恐怖心も必要だと思っていたそうで、そんな時、触発されたのが英国のベストセラー絵本作家ブライアン・フロードのイラストでした、NYタイムズは彼の絵を「グロテスクだが美しい」と評しています。
本作の殆どのキャラクターデザインはブライアン・フロードが描いたものです。妖精のようなキーラのフィギュアを作成した美術スタッフのウェンディー・ミッドナーとブライアン・フロードは意気投合、これが縁で結婚しています。後に彼女はスターウォーズのヨーダも創っています。
まだCGが使えなかった時代、特撮の最高技術は動くフィギュア、アニマトロニクスでした、本作でも一体あたり4人のコントロールで動作、表情を実現しています。全景のショット用にはゴジラと同じ着ぐるみ、演者はパントマイマー、アスリート、ダンサーなどからオーディションで選ばれたようです。
さてストーリーはというと地球ではなくTHRAという惑星、なんと太陽が3つもありそれらが直列に並ぶとき大異変が起きるという、救世主として生まれた少年ジェンは回避するには城にある秘宝のクリスタルの欠けた一片を探して戻すことと長老に告げられる。それからジェンの冒険物語が始まります・・。
悪の部族は禿鷹とトカゲを合わせたような化け物、善の部族も魚と馬のような顔をしています、流石にヒーロー&ヒロインは人間に近づけたものの、大体は不気味に描かれます。この辺が子供たちにどう映るのか微妙ですね、私はギリギリでした。個性的なキャラ造形の流れは「アバター」などにも影響しているかも知れませんね。
ひねりとして善と悪は本来一体だったというのはシュールなオチでしたがまあ、物語というよりは実写人形劇の金字塔、その映像、世界観に目を見張って欲しいと言うことでしょう。
全3件を表示