「実はずいぶんと不道徳な話」卒業(1967) Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)
実はずいぶんと不道徳な話
総合60点 ( ストーリー:60点|キャスト:65点|演出:65点|ビジュアル:70点|音楽:80点 )
この映画を観る前から、サイモン&ガーファンクルの音楽を好きで聞いていたしこの映画に使われたことを知っていた。本当かどうかは知らないけれど、なんでも歌をこのように作品中に挿入したのは、この映画が初だというのを後に聞いたことがある。そしてこの映画を観る前から、名優ダスティン・ホフマンが主演したことも有名な最後の教会の場面も既に知っていた。そんなわけで学生のときに初めてこの映画を観たときは期待値が高かったし、内容はよく覚えていないんだけれど、やはり結婚式から花嫁をかっさらうなんていかした終わり方だなんて少し思ったように記憶している。
だがそれから数年後。
「本人たちはいいんだろうけれど、突然花嫁をさらわれた花婿や残された人々は一体どうなるのか。あの結末は大嫌い」
そんな意見を聞いたときに、それはそのとおりだなと思った。大人になって改めて観てみると、他人の迷惑など考えない随分と責任感のない幼稚な主人公の言動が目に付く。ロビンソン氏から妻と離婚すると言われて「どうしてですか?」と原因を作った不倫の張本人が聞きかえしてみたり、相手の家庭を破壊しておいてそのうえさらに娘を略奪婚をしてみたり、他人の迷惑を顧みることがない無軌道な暴走ぶりは痛々しいほどに馬鹿でくだらない。
他人の迷惑など知らないとばかりに学生運動とヒッピー文化が花咲いて、若者たちが自分たちの方向性を見出すことが出来ず暴走した時代の作品だからかもしれないが、被害者側のことはろくに描かれていなくて自分の好き勝手に動く人たちを中心に物語は動く。主人公の立場から観た映画としての物語の展開の爽快感はあるのだが、よくよく考えると随分と不道徳で反社会的な映画でもあって、いい大人としては恋に燃える若い二人の逃避行を無責任だと感じてしまい、最早素直に祝福する気分にはなれなくなっていたのでした。