劇場公開日 2020年1月31日

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「昭和からの映画ファンにはたまらない傑作ウエスタン」続・荒野の用心棒 よねさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0昭和からの映画ファンにはたまらない傑作ウエスタン

2020年2月6日
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メキシコの独立運動家、ウーゴ将軍と南軍のジャクソン少佐が睨み合うメキシコ国境。バーテンダーと娼婦しかいないゴーストタウンの酒場に現れたのは町外れで拷問されていた娼婦マリア、そして彼女を救ったジャンゴだった。

平日のお昼時にこんな作品を観に来る、職場で干されてるか無職かの二択と思しき穀潰しのシニア世代、その中でも私は一番下っ端ですね、冒頭でジャンゴに瞬殺されるレベルの。

棺桶を引きずりながら荒野を歩くジャンゴの後ろ姿、そしてその勇姿にかぶさる主題歌。ここで全身総毛立ちますが、これは昭和の幼少期から映画を追いかけてきた人間だけのノスタルジー。60年代当時のもっさりとしたテンポ、妙にオレンジがかった血糊、男臭くてクドい台詞、オーソドックスでベタな展開・・・何の予備体験もなくこれを観た人は全然違う感想を持つだろうなと思います。

僕らの幼少期はウエスタンをテレビで観るのは日常風景。CMにもチャールズ・ブロンソンやジュリアーノ・ジェンマが出てました。ボンヤリですけど当時の僕らにしてみたら大人イコール腰にホルスターぶら下げた西部の男達みたいなイメージがありました。フランコ・ネロの精悍な顔、男が憧れる理想の男がここにいる、それだけで感無量です。

これは僕ら世代の違和感だと思いますが、僕らの記憶にあるウエスタンは全部日本語吹替版なので、メキシコの国境で全員がイタリア語を話している風景は何気に新鮮でした。あと個人的に感慨深かったのがゴーストタウンの泥濘み。昭和のは原風景にはこんな感じの不衛生極まりない泥濘みがあちこちに横たわっていたから当時は何の違和感もなかったんですが、そんなものがほぼ消え失せた今それを見ると足裏にまとわりつくあのネチャッとした感触がゾワッと蘇ってきてなかなか奇妙でした。

こんなもん言うまでもないですが、本作が後の映画に与えた影響は計り知れなくて本作を観ながら色んな作品が脳裏を過ぎりました。そんな中で意外だなと思ったのはクライヴ・オーウェン主演の『シューテム・アップ』。もう10年以上前の現代劇ですが凄腕のガンマンが娼婦と逃げるというプロットはウエスタンそのもの。かなりトリッキーな手口で本作へのオマージュをブチまけていることを今更知りました。

終幕後客電が点くまでの間にふと思ったのは、自分にとっての昭和の原風景は父の傍で観ていた映画の世界と地続きだということ。こういう懐かしい映画をスクリーンで観るのはその原風景を追体験し、喪われた記憶を補完する儀式なんだと思いました。そんなに残っていない人生、こんなことにも時間を割いていきたいなと思います。

よね