「こんなに人が余っているならば食料の生産をさせればいいのに」ソイレント・グリーン Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)
こんなに人が余っているならば食料の生産をさせればいいのに
総合:40点 ( ストーリー:40点|キャスト:65点|演出:50点|ビジュアル:65点|音楽:60点 )
設定が無理がありすぎで駄目なうえに、説明不足で分かり辛い。
食べ物には色別の種類があって不足している。それなのにたくさんの人間が都市部に過密集中していて、食料の生産もしないし生産できる農村地帯に脱出もしない。
それでいて通りには飢死・病死した死体が溢れているわけでもなく、暴動も起きていない。我が子が飢死しそうならば何をしてでも食料を手に入れようとするのが人間だが、警官として普通に生活している主人公は捜査先の物を盗むのに、彼の住む建物の階段に住む浮浪者達は強盗1つしようとしない。むしろ失業者ばかりといえどもみんなそれなりに健康そうに見えてしまう。犯罪や不正しかないはずの世界が、我慢強い人々を選りすぐったかのようにみんな大人しく体制に従う。
そんな世界観には白々しさしか感じない。これではむしろ日常的に盗難・強盗が起きる現在の食糧危機の起きていない現実のアメリカのほうが余程犯罪者で満ちている。これはこんな世界なんだ、未来はこうなるかもしれないんだという興味は少しはそそるものの、演出も迫力が無いし、これでは本当に人々が困窮しているという生々しさが伝わらない。
それに作品に登場する家具・道具・部屋の作りといったものが若い女が付く以外はいかにも作品が制作された70年代のものそのままで、この作品なりに予想した2022年の未来というものがない。
そして物語の衝撃的なはずの結末だが、人口爆発で食料が無い割には穀物などの普通の食品の配給がなくわざわざ生産に手のかかる加工食品の配給ばかりになっているし、食料生産の秘密に関しては作品のかなり早い時期から予想がついてしまって全く意外性がなかった。この程度の結末のためにこんな状況設定でこんな演出でこんな映像しかないのかとがっかり。