「「夢の香り」である所以」セント・オブ・ウーマン 夢の香り ychirenさんの映画レビュー(感想・評価)
「夢の香り」である所以
この映画で忘れてはならないのが、主題の「セントオブウーマン」(直訳で女性の香り)に続く「夢の香り」というサブタイトルだ。女性の香り、それはつまり男性にとっての夢の香りという意味であろうか?
現代人の意識からすればコンプライアンスに抵触しそうな卑猥な表現などと感じる人もいるかもしれない。しかし、この映画を観た人ならば誰もが想像し思いを馳せるだろう。その夢の香りに。
この物語の概要は感謝祭の休暇に名門校の苦学生チャーリーと盲目の元陸軍中佐フランクが共にニューヨークを旅し心を通わせていくというもの。チャーリーを演じる若き日のクリスオドネルの清々しさとフランクを演じる円熟期のアルパチーノの圧巻の演技は既に映画ファンの知るところだが、それだけではないのがこの映画の魅力。
劇中、フランクは毒舌と下品な言い回しで粗暴を装っているがそれとは裏腹に研ぎ澄まされた洞察力と鋭い嗅覚で幾度となくチャーリーをハッとさせる。
魅力的な会話で女性客室乗務員の心を掴み、偶然居合わせた若く美しい女性にタンゴを実演で指南し、知的で魅力溢れる女性教論から畏敬の念を抱かれる。そしてその女性達全てが夢の香りを纏っておりフランクは瞬時にその香りが何であるかをを言い当てることができるのだ!これこそ女性好きの真骨頂。
客室乗務員が身だしなみとして身につけた気品あるコロン。タンゴを踊る若く美しい女性から放たれるオグリビーの石鹸、知的な女性教諭からほのかに香る岸辺の花という名の香水。決してスクリーンから香りは漂ってはこないが観衆達の鼻はくすぐられる。
苦学生と退役軍人が心通わせる物語で、なぜタイトルがセントオブウーマン、夢の香りなのか。この映画を観終えた人ならば、なるほどそうゆうことか、と、頷けるのではないだろうか。