「【”価値の無いただの金属。”全編に鳴り響く重い爆音、次々に斃れていく兵士、物凄い殺戮シーンの数々。サム・ペキンパー監督による戦争の恐ろしさ、鉄十字章に固執する人間の醜さを描いた反戦映画の傑作である。】」戦争のはらわた NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”価値の無いただの金属。”全編に鳴り響く重い爆音、次々に斃れていく兵士、物凄い殺戮シーンの数々。サム・ペキンパー監督による戦争の恐ろしさ、鉄十字章に固執する人間の醜さを描いた反戦映画の傑作である。】
ー 今作は1943年のドイツ軍とソ連軍が死闘を繰り広げる東部戦線が舞台である。そして、描かれる内容は鉄十字章の獲得に異常な執念を持つ最前線に着任したプロイセン貴族のシュトランスキー大尉(マクシミリアン・シェル)と、立場上は彼の部下であるシュタイナー伍長(ジェームズ・コバーン)との関係性を軸に物語は進む。-
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・冒頭から、塹壕の中に降り注ぐ爆弾の重い音が連続して続く。そして、塹壕の中のドイツ軍を率いるシュトランスキー大尉のプロイセン貴族として、最大の名誉である鉄十字章を得ようとする卑劣な姿が凄すぎる。
彼は、前線に立つことなく塹壕の中で、指示を出すだけでありながら、策謀により功を立てるふりをするのである。
だが、彼の前線に立たなかった事が、この映画の皮肉極まりないラストに効いてくるのである。
・彼と対照的に描かれるのが、常に前線で戦うシュタイナー伍長である。故に彼は部下たちからの信頼も厚い百戦錬磨の男として描かれるのである。
だが、そんな彼も爆弾に吹き飛ばされ、頭を強打し病院へ収容される。そこで懇ろになった看護師と関係するも、前線に戻る兵士を見て彼も又、前線へ戻るのである。
・一方、シュトランスキー大尉は鉄十字章を得ようとするために、シュタイナー伍長を昇進させたり、自身が功を成した訳でもない戦いを自分の手柄として、トリービヒ少尉を抱き込むがシュタイナー伍長はそれを否定し、二人の関係はねじれて行く。
・シュタイナー伍長が率いる隊が、ソ連の女性兵士たちが立てこもっている所に乗り込んで行くシーンも、シビアに描かれる。入浴している女性兵士の風呂に入る輩や、女性兵士を連れて納屋に行く兵士の”自業自得”の姿。あれは、相当に痛そうだが理性あるシュタイナー伍長は、そんな自分の部下である兵士のいる納屋にソ連の女性兵士たちを送り込むのである。響き渡る絶叫。
・シュトランスキー大尉の画策に気付いたブラント大佐に対しても、シュタイナー伍長は真実を告げない。
だが、シュトランスキー大尉の情報操作により、最前線に取り残されたシュタイナー伍長の隊が、味方の隊に対して歩むもトリービヒ少尉の号令により次々に撃ち殺される姿。だが、シュタイナー伍長は生き残り、トリービヒ少尉に向けて亡くなった部下たちの顔を思い出しつつ何発も銃弾を撃ち込むシーンも相当に恐ろしい。
<シュトランスキー大尉率いるドイツ軍は壊滅状態になり、かれもコソコソと逃げようとする。が、そこに現れたシュタイナー伍長は氷のような目をして、彼に指示を出すシュトランスキー大尉に対し、あんたが俺の小隊だ!と言い放ち、二人で銃を持ち戦いの中に飛び込んで行くが、実戦経験のないシュトランスキー大尉は、あたふたと慌てふためき、そこにシュタイナー伍長の皮肉極まりない笑いが響く中、物語はエンドに向かうのである。
そして、エンドロールで示される当時のドイツ軍が民に対して行った白黒写真は、今であれば検閲が掛かってもおかしくないものも含まれている。
今作は、サム・ペキンパー監督による戦争の恐ろしさ、鉄十字章に固執する人間の醜さを描いた反戦映画の傑作である。>