戦艦ポチョムキンのレビュー・感想・評価
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緊張の連続
入りから速いリズムの曲が流れ息苦しさを感じる。時折混じる金管楽器の音で感覚が鋭敏になっている自分に気付く。時折映る顔のアップにドキリとさせられる。
そうした中で3つの大きな緊張のピークがやって来る。一つ目はポチョムキン号の甲板で護衛隊が銃を構えるシーン、二つ目はオデーサの階段での虐殺シーン、そして最後は艦隊との遭遇シーン。後に行く程緊張の波は大きくなるように作られている。それぞれのシーンの見せ方、音の使い方のバラエティが凄い。
特にオデーサの階段のシーンでは、逃げ惑う市民の中に様々なドラマが織り込まれる。そして機械のように発砲の合図を出す指揮官と操り人形の様な兵隊達が、女子供関係なく淡々と殺していく。兵隊だって軍服を脱げば子であり親であり夫であろうに…。
迂闊にもポチョムキン号の護衛隊のようなシーンを期待してしまった自分の能天気さを恥じずにいられない。
一時間ほどの作品だが、緊張の連続でどっと疲れた。
『ショスタコーヴィチ交響曲第5番 革命』の為の映画
ウクライナとの関係を考えて見よう。
モンタージュされた場面を単純に繋げて見ると面白い事が分かる。
帝政ロシアはロシア人。それは正教会の神父らしき人物が出てくる。
主人公ワクリンチュクはユダヤ人それは十字架をもろともせずに挑む姿で分かる。
オデッサの貧困層の市民はユダヤ人。それは『ユダヤ人め!』と口走るブルジョア風の男に、周りの市民が怒りだす。さて、同じユダヤ人が押しかけるオデッサの階段に、ウクライナ人のコサックが発砲をする。つまり、虐殺って事だ。
映画を素直に読み取ると、ユダヤの民をロシア、ウクライナが寄ってたかって虐殺しまくるって事なのだ。
では、事の真相は?コサックをウクライナ系ロシア人と見る以外は、全部の民族が入り混じっていると言う事。つまり、侵略戦争では無く、階級闘争と言う事だ。それは、映画の最初にレーニンの言葉で分かる。
しかし、プーチンの理論は、この映画が発端の様に思う。つまり、ウクライナ系ウクライナ人に対して『ナチス!』と言っている根拠。そして、ゼレンスキー大統領がロシア語しか喋れないユダヤ系ウクライナ人と言う事が問題を更に難しくしている。
レーニンもスターリンもフルシチョフもロシア系ソ連人ではないと言う事も理解しておくべきだ。
更に当のエイゼンシュタインはユダヤ系ソ連人。正教会をないがしろに出来る訳である。高校2年の時、ソ連を賛美する世界史の教師から見に行くように進められて、どこかで見た記憶があるが『プロバガンダ映画じゃん』って思った。改めて見ると階段落ちや虐殺場面は迫力がある。
また、あとから足されたのか『ショスタコーヴィチ交響曲第5番 革命』の為の映画のような気がした。
個人的に来週オーケストラでその演奏を聞きに行く。楽しみ♥
以下 6月4日 かつしかシンフォニーヒルズにて
『ショスタコーヴィチ交響曲第5番 革命』の感想
『革命』はショスタコーヴィチが、エイゼンシュタインのこの映画を見て、作曲したと仮設を立てたい。妙に絵と音楽があっている。さて、
アンコールで『チャイコフスキー』の『アンダンテ・カンタービレ』をマイストロ自らが、バイオリンを奏でた。大変に異例でもあり、言うに及ばず、素晴らしい演奏だった。ブラビー!♥
でも、この映画は!この音楽が作曲される前の映画なんだよね。
音の無い叫び
これぞ、映画史上に燦然と輝く、サイレント作品の最高傑作。当時、若干27歳のエイゼンシュテイン監督が、独自のモンダージュ理論を実践した不屈の名作である。1905年6月に本当に起きたポチョムキン号の反乱を描いたものである。1905年という年は、このポチョムキンの事件をきっかけに、社会主義革命へとなだれ込む、ロシアの歴史の中でも大切な年だった。そんな歴史的大事件を、エイゼンシュテイン監督は、リアルに作り上げた。物語は前半のポチョムキン内部の反乱と、後半のオデッサ階段の大虐殺シーンと大きく2つに分かれている。上司のイジメに耐える水兵たちの怒りの表情が印象的な前半と、何より虐殺により死んでいく弱き者達の「叫び」が魂に響く1作だ。「叫び」・・・この作品を一言で形容するならこれしかない。サイレント映画でありながら、画面からにじみでる人々の悲痛な「叫び」の迫力には同調とか感動とかそんな生ぬるい感覚をあたえない。むしろあまりの激しさに、こちらの精神は麻痺して、呆然としてしまう。それほどまで直接見ている我々の魂をゆさぶるのである。展開がゆっくりなのが通常ののサイレント映画(ドラマ)だが、モンタージュ効果を駆使し、迫力かつスピーディーに展開され、見るものをひきつけて行く。群集の心理が、くるくる変わる画面で描写されるあたりは特筆に値する。そして、やはり語るべきはオデッサ階段のシーンだろう。『アンタッチャブル』でもオマージュを捧げられた、有名な乳母車のシーンも素晴らしいが、私が特に衝撃をうけたのは、息子を殺された母親が、逃げ惑い、階段を駆け下りる群集の中で、ひとり“上へと登って行く”シーンである。子供を殺された母の苦しみ。「どうか撃たないで!」。母の願いや人々の叫びもむなしく大量虐殺は続く。人々の「叫び」のアップを撮り続けるカメラは、貧しい人々の服の穴をも映し出す。その冷酷までにリアルな描写。心に焼きつく強烈なインパクト。エイゼンシュテイン監督の描いたのは、寸分ももらさない“事実”そのものなのだ。やがて虐殺も終焉をむかえ、民衆の勝利がやってくる。モノクロの画面で、唯一、真紅の自由の旗が翻る。ニクイ演出である。サイレント映画を1本だけ見るとしたら、それはこの作品以外にありえない。迷うことなく見て欲しい、「叫び」の作品を・・・。
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