「リアリズムに寄せた本格スパイアクションへ」007 リビング・デイライツ pipiさんの映画レビュー(感想・評価)
リアリズムに寄せた本格スパイアクションへ
ボンドやマネーペニーの若返り、世代交代に見事に成功した本作。
(ついでに言えばフィリックスさんも、もうこのまま固定してほしい)
当時はティモシー・ダルトンの風貌に抵抗があって、TV放映時に流し見、ながら見程度しかしなかったが、改めて観れば実に良い。
冒頭のジブラルタルNATO演習訓練アクションから「いや、2時間」(爆笑)に至るまでのオープニング。チェコスロバキアの狙撃シーンやオーストリアホテルでのウォッカマティーニをシェイクなどでも、新ボンドの方向性がわかり安堵する。
ボンドカーも原点回帰のアストンマーチン。ただしV8。フロントガラスにはデジタルディスプレイ表示、フロントホイールにはレーザーカッター、リアにはスパイク、ミサイルランチャーやロケットブースターは当然のお約束。
Qに「塗装したばかりだから傷つけないで」と言われたけれど、最後はこれまたお約束の自爆装置ON!(笑)
そう!コネリーが冒険ファンタジー、ムーアがアクションコメディならば、ダルトンはコネリー寄りのシリアス路線にリアリズムを加味した「原作の雰囲気に近い本格スパイアクション」に仕立ててきたのだ!
東西冷戦構造の終局前にこういう映画が作られていて本当に良かったと思う。
東側諸国で育ったカーラにとって遊園地などというものは初体験なのだろうと思うと、胸に迫るものがある。
目を輝かせ、生まれて初めての遊園地を楽しむカーラの表情と、それを優しく見守りエスコートするボンドの対比が良かった。
後半はランボー3が一瞬よぎったけど、リビングデイライツの方が先でしたね。公開時期もタイムリー。
ランボー3の方は公開日10日前にソ連が10年に及ぶアフガン介入から完全撤退したのだから不遇である。
飛行機墜落直前に脱出後、夕飯を食べに行くパキスタンは、当時CIAがムジャーヒディーンに武器を流していた経路だ。
9.11後、まるで各国の関係性が変わってしまった・・・。タリバン政権復活の今、アフガンの今後が大変憂慮される。
気を取り直して映画の世界に戻り、ジョン・グレン監督こだわりの空中スタントだ。
今回は今までで最も迫力があったと思う。スタントマンさん、お2人、ガチで演ってますよ!
あれ、どういう安全対策取ってるんだろう?命綱はあるのだろうけど、映像に映り込んだりしないし、何よりも飛行機から繋がってる網のロープ部分をどれだけ信頼できるのか?
アナログフィルムですからね。デジのような加工は出来るはずもなく。
いやはや、本当に凄い!としか言いようがない。
ダルトンはあと1作しかないけれど、もっと続けて貰っても良かったね。
音楽も「A View to a Kill」(これDance into the fireってタイトルだと思ってたw)は、ニューウェーブ、ニューロマンティックとは言え、歌詞や曲の雰囲気はGoldfingerやThunderball、Diamonds Are Forever、The Man with the Golden Gunの根底に流れているものと相通ずるところがあると感じたが、今回のa-haやPretendersは本当にガラリと変わった印象を受けた。
昭和ボンドと平成ボンドを繋ぐ存在であった事こそがダルトンの果たした役割だったと言えよう。(ボンドだけに、ってごめんなさい〜(汗)おあとがよろしいようでw)