「虚構の曖昧さ」スモーク neonrgさんの映画レビュー(感想・評価)
虚構の曖昧さ
90年代らしいフラットな照明で、影を強調せず日常の光に包まれたような映像が印象的でした。全編を通じて煙草の煙が漂っており、タイトルの「スモーク」は単なる小道具以上に、嘘や虚構の曖昧さを象徴しているように思います。
この映画のテーマは「嘘」だと感じました。登場人物たちは嘘をつき、名前や経歴を偽り、物を盗むことさえしますが、それが断罪されることはありません。むしろ、それらは人間同士をつなぐ「方便」として働きます。最後のオギーと小説家の会話では、互いに嘘であることを承知しながら、それを含んだ上で友情や信頼関係が成り立っていることが描かれており、人間関係の本質を突いているように思いました。
哲学的に深掘りさせる作品ではなく、あくまで人間が日常の中でただ存在している姿を淡々と映し出した映画です。煙のように形を定めず、ふわっと漂う物語は掴みどころがないですが、その曖昧さごと受け入れることで、観客は温かさと現実感を同時に感じられるのではないでしょうか。
鑑賞方法: WOWOWシネマ
評価: 80点
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