「Nobody knows the way it's gonna be。 二度とは戻らぬあの日々が封じ込められた青春映画の金字塔✨」スタンド・バイ・ミー たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
Nobody knows the way it's gonna be。 二度とは戻らぬあの日々が封じ込められた青春映画の金字塔✨
1959年の田舎町を舞台に、森の中にあるという死体を探しに出掛けた少年4人の、一夏の冒険を描いた青春ドラマ。
監督は『スパイラル・タップ』のロブ・ライナー。
原作は『キャリー』『シャイニング』の、”ホラーの帝王”スティーヴン・キング。
少年たちのリーダー、クリス・チェンバーズを演じるのは『エクスプロラーズ』の、名優リヴァー・フェニックス。
映画ファンのみならず、広く人口に膾炙している青春映画のマスターピース。世界で最も人気のある映画の一つと言っても過言では無いでしょう。
誰もが経験したであろう子供時代の煌めきと苛立ち、自由と不自由、全能感と無力感を僅か84分の間に綺麗に詰め込んだ、奇跡のような一作。
かつて少年少女だった全ての人に刺さるであろう、万感胸に迫る大傑作!!
もちろん私も大好きです❤️
原作小説のタイトルは「The Body」=「死体」。
「これじゃホラー映画かエロ映画みたいじゃねぇか!タイトル変えろおらぁ!!」と映画会社に言われたので、今のタイトルに落ち着いたらしいです。
もし本作が原作通り『ザ・ボディ』というタイトルだったら、ここまで愛されていなかったかも知れませんね。
ちなみにこの原作小説は未読であります。
『スタンド・バイ・ミー』…。確かに素晴らしいタイトルだが、一つ不満が。このタイトルは本作のテーマソングでもあるベン・E・キングのヒットソングから取られたものであるが、この曲が世に出たのは1961年。本作の主な舞台である1959年にはまだ存在していなかったのです。
バディ・ホリーの「エブリデイ」やザ・コーデッツの「ロリポップ」、ジェリー・リー・ルイスの「火の玉ロック」など、本作のサントラはオールディーズの名曲揃い。ブリティッシュ・インベイジョンより前の、おおらかで牧歌的な曲の数々が映画を盛り上げます。…まだビートルズもストーンズも、ボブ・ディランもビーチ・ボーイズも居ない、そんな時代があったなんてとても信じられないっ!
本作で流れる楽曲は1959年以前のものばかり。だからこそ、61年発表の「スタンド・バイ・ミー」が使われている事が惜しいっ!いやまぁこの歌は確かに名曲だし大好きなんだけど、そこは59年以前の楽曲で統一して欲しかった。こんなん気にするのは自分だけだとは思うんだけどね…。
あまりにも有名すぎる映画。それを今更何をか言わんやと自分でも思うのだが、今回見直してみて何点か気付いた事があったのでそれをピックアップしていきたいと思う。
まず一つ。本作は大人になった主人公による少年時代の回想により構成されている。現在の時間軸があり、そこから主人公が振り返る過去が映画の主な舞台となっている訳です。『フォレスト・ガンプ』(1994)形式ですね。
となると、映画は必然的に主人公の主観によるものになります。つまり主人公が関わっていないことは描く事が出来ません。
しかし、本作にはそのルールに沿っていない場面が出てきます。具体的には町のチンピラであるエース軍団(キーファ・サザーランドが若いっ)が「郵便ポスト打ち」というクソ迷惑な遊びをやっているところ。主人公のゴーディは、自分たちが死体探しをしている最中、エースたちが何を行っていたのか知る由もないのですから、この描写は明らかにおかしい。だめじゃん!!
そんなことはロブ・ライナーだって当然わかっているはず。となると、この描写は意図的に仕込まれている事になる。
一体それは何故か。ここには主人公の職業が”作家”であることが関係していると思われる。つまりゴーディはフィクションの担い手なのです。
この描写を挟む事により、本作で描かれている内容は全てが本当の事では無いんだよ、という事が暗に示されている。冒頭、「クリス・チェンバーズ弁護士刺殺される」という新聞を読み呆然としているゴーディが描かれているので、この少年時代の冒険が丸々嘘っぱちであるとは考えづらいものの、その内容は虚実入り乱れているのでしょう。
では何故、ゴーディは真実を語らずフィクションとして少年時代の思い出を我々に提示したのか。
それはその少年時代の一夏の出来事に、語りたく無い事、自分の胸に秘めておきたい事があったからなのではないでしょうか。
それは何か!という事なんだけど、それが今回気づいたもう一つのこと。
今まで少年たちの友情映画かと思っていたけど、これラブストーリーじゃん!
涙するゴーディの肩をクリスが抱き寄せる描写はラブシーン以外の何者でも無いし、他の少年たちに比べてがっちりとしたクリスの肉体が妙に生々しいのも印象的である。
爽やかな雰囲気とは対照的に、本作には「死」の匂いが充満しており、また女性の登場人物は極端に少ない。一見「生=性」の要素の薄い作品のように見えるのだが、意図的にホモソーシャルな世界を作り出す事で、その背後にある同性への恋慕を覆い隠している、そのような印象を受けました。
こう解釈すると主題歌の「スタンド・バイ・ミー」にも合点がいく。普通友達に「darling」とは言わないもんね。
もちろん本作を純粋な友情物語と捉えても良いのだが、少年の一夏の恋物語と捉える事でまた別の楽しみ方が出来る。
いずれにせよ、まだ何者でもなかったあの頃の自分と重ね合わせながら、この映画でノスタルジーに浸るのもたまには良いのでは無いでしょうか。うん、名画!
ウェンザナイ〜ハズカム〜♪