劇場公開日 1950年11月14日

「無理を通すには・・」頭上の敵機 odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)

2.0無理を通すには・・

2019年9月19日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD、映画館

 舞台となるのはイギリスのアーチベリー米空軍基地、918部隊。爆撃機は大型なので回避飛行は難しいし正確な爆弾投下には水平飛行が必要であり狙われやすい、主力爆撃機のB-17Fは操縦席上の装甲が弱く、機銃の取り回し範囲から真上の方向(原題の12 O'clock High)からの攻撃に弱かった(後継のB-17Gは装甲、銃座とも増強された)。しかも航続距離の関係で護衛戦闘機は随行できず(後にP-51 マスタングで可能になった)対抗策は密な編隊飛行で機銃の掃射密度を上げ近寄らせないことくらいだった。弱点が克服できていない段階で敵戦闘機の待ち伏せや対空砲火に晒される昼間爆撃で帰還率は低かった。
ヨーロッパでの戦いは米軍兵士にしてみれば助っ人意識、弱い使命感ではミスも多く、死への恐怖は拭えない。そんな折、対空砲火の届く低高度爆撃命令を巡って指揮命令系統は破たんする、命令に反発する温情派の司令官に替わって冷徹な司令官が着任、あえて怒りの対象となることで不安をすり替え、緊張感、結束力を高める。実践指導で編隊飛行の有用性を示すことで自信の回復に繋げる。しかしB-17の根本的な弱点が解消された訳ではなく数を増す敵戦闘機の執拗な攻撃で目前で部下の機を失う衝撃から司令官もストレス障害にみまわれる。初見ではテーマは組織論やコーチングのように思ったが根は深い、運に頼るなと言う割には精神論、兵の能力だけでは爆撃攻撃の弱点は解消しない、論理的な分析、問題解決能力の欠如もしくはそれ以前の無理は承知の確信犯の横行は無くならないということか。
戦闘シーンは軍の記録映画を用いたらしい、シーンは少ないが戦争体験世代には爆弾の嵐などみられたものではないだろう・・。

odeonza