「アル・パチーノ、そしてジーン・ハックマン」スケアクロウ talismanさんの映画レビュー(感想・評価)
アル・パチーノ、そしてジーン・ハックマン
二人の演技が素晴らしい。あまりに素晴らしい。70年代のアメリカ社会で、一旦落ちこぼれたけれど新たな目標を頑なに持ち続けて再スタートの旅を続ける。
何枚も何枚も何枚もシャツを着ていて寝るときは靴を枕の下に置くマックス(ハックマン)。喧嘩っぱやい彼も時間はかなりかかったが、ひょうきんで陽気なライオン(パチーノ)によって変わっていく。ライオンとは口をきかない喧嘩中でも、顔中が血だらけに傷ついたライオンの仕返しをするのはマックス。妻に電話するライオンを励ますのもマックス。「ビジネス・パートナー」がいまやかけがえのない友達だとマックスは思っている。
人を笑わせ人懐っこく優しいライオンはマックスにとって最高にいい奴だ。タバコ好きのマックスに最後のマッチもあげた。そのライオンは一方で、げすで最低の暴力を振るったライリーにとってはお誂え向きの「無害な」かかしだった。悪意のあるカラスに暴力をふるわれたかかしはもはや笑わない。陽気で人懐こいライオンはもう居ない。ライオンの5年間は身重の妻を一人おいて勝手に旅立って得た自由だった。妻にお金は送っていた。でもその間に妻の様子や赤ん坊のことも聞かず自分のことを知らせる電話一本、手紙一本寄越さなかった。5年間の自由気儘、良心の呵責もあったろうが、送金してたからいいだろうという傲慢のしっぺ返しが妻があえてついた嘘。ライオンの絶望は彼の心と体を蝕んだ。
6年間の不自由な刑務所生活を終え、ノートに書いたピッツバーグの銀行口座の額が全ての単純なマックスには、かかしの本当のことなど何もわからなかったに違いない。
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