「後味が悪かった」スウィート ヒアアフター 雨音さんの映画レビュー(感想・評価)
後味が悪かった
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この映画は、観ているうちにだんだん恐ろしくなってきてしまった。人の「闇」のようなものが浮き彫りにされてくる感じ。ニコールの冷たい瞳がだんだん怖くなってくる。
大人たちの偽善的な目論見は、最後のニコールの一言でどんでん返しをくらってしまう。彼女は大人たちの言うなりにならなかった。というより、そうならざるを得ない悲惨な運命にあった。
それだけならまだシンプルだけれど、少しややこしい。彼女は、それでも、村で一番健全と思われている夫婦の子供。ここがおそろしい。
そもそも、健全だとか、信頼されてる、って一体何でしょうね?そんなのは表面的なもの。
一番皆から引かれ気味だった芸術家夫婦は、実は、なすかなかまともで温かみがある人たちのようだし、
偉そうなことを言う弁護士さんはプライベートでは娘との関係ひとつ解決できていないわけだし、
住民を大切にしていた運転手夫婦だって、皮肉にもその住民の手で追い出されてしまう。
普段の生活は穏やかに過ぎても、何かあるとえぐり出されてくる。
大人の、勝手さや弱さ、子どもの感性の鋭さへの鈍感さ。そんなものを感じた。
カンヌっぽい個性的な鋭い映画という印象。そして、俳優さんたちはそれぞれになかなか味があってよかった。
ただ、後味が悪かった。
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