シンプル・プランのレビュー・感想・評価
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ヌルヌルと落ちていく
サム・ライミ監督による、このシンプルな計画を描いたシンプルな物語の作品は、大金によって狂わされた人々と狂わされた歯車によってどこまでも落ちていく。
少しの疑心暗鬼、少しの怯え、少しの間違い。ほんの些細なことの連続であるはずなのに大きな間違いに発展していく。
映画なので仕方がないとは言えるけれど、あそこでこうしておけばとか、こうじゃなかったらとか、そんなことばかりが続く。
とはいえ、あり得ないような愚かな行動をとっているかというとそうでもない。この絶妙な間違い加減が良い。
全面雪の映画はハズレが少ないとは持論だが、この作品も大きな当たりとはいかなくとも充分な娯楽性を有した面白いサスペンスだった。
ビリー・ボブ・ソーントンの演技に釘付け!
真っ白な雪に閉ざされた、一見平和なアメリカの田舎町。
真っ黒なカラスたちが不穏な雰囲気を漂わせます。
ちゃんと大学出て、ちゃんと肥料屋さんで働いて、ちゃんと結婚してて、ちゃんとした家に住んでて、ちゃんと散髪してて、街の人達ともうまく行っているし、何しろ「ちゃんとしている男」ハンク。
そんな「ちゃんとした」彼には、全く「ちゃんとしていない」兄、ジェイコブがいて、ちゃんとしていない兄には、やっぱりちゃんとしていないマブダチ、ルーがいます。
ジェイコブは汚いアパートに犬と暮らしていて、ルーは一応妻と持ち家に住んでいますがどちらも無職かつ貧乏。
この3人の男たちが誰もいない森の中で偶然大金を見つけ、それがきっかけで全員転がるように破滅して行くことになります。
当面、金はハンクが預かり、頃合いを見て3人で山分けにする計画を立てますが、ジェイコブとルーのダメっぷりにハンクは危機感を募らせます。
そんなハンクから計画を打ち明けられた妻は「金の一部を戻してこい」だの「ルーを騙して偽の証言を録音しろ」だの、一見良さげな提案をしてきます。それに従うハンクはジェイコブを巻き込みながら悪い方へ悪い方へと落ちていきます。
本作の最大の見所は、登場人物たちの仮面がちょっとずつ剥がれて、本性がむき出しになっていくところです。
弟、ハンク・ミッチェル(ビル・パクストン)
「ちゃんとした男」として登場した彼は、実は一番鈍感な男です。自分の大学の学費の出所、父の本当の死因、兄の孤独と絶望、妻の絶望、いろいろ無頓着。
兄、ジェイコブ・ミッチェル(ビリー・ボブ・ソーントン)
女と付き合ったのは1回だけでキスしたこともない。それも女同士の賭けの対象にされてという悲しいエピソードを淡々と話ます。周囲からも弟からも、ダサい愚鈍なダメ男として扱われていますが、観察眼と感受性は鋭く、時に真実を言い当てます。
なにしろビリー・ボブ・ソーントンの演技に釘付けになってしまいます。「お人好しの愚鈍な男」として登場しますが、徐々に内面に孤独と絶望を抱えた繊細で鋭い感受性を持つ男であることが分かります。こんな複雑なキャラクターをビリー・ボブ・ソーントンはまるで多重人格者のように、場面ごとに雰囲気を変えながら演じています。彼の演技は観るものに忘れられない印象を残します。複雑なキャラクターを演じたら、彼の右に出るものはいないと思います。
悪友、ルー・チェンバース(ブレント・ブリスコー)
「邪魔者」として登場した彼は見た目通りの単純なキャラクターです。マブダチのジェイコブが自分よりハンクを選んだことに腹を立て銃をぶっ放します。
妻、サラ・ミッチェル(ブリジット・フォンダ)
図書館勤務の「貞淑なかわいい奥さん」として登場する彼女は、実は4人の中で1番狡猾で欲深な人間です。彼女に比べれば、3人の男たちが純情で可愛らしく見えてきます。ハンクとの結婚生活も一見幸せそうに見えますが、彼女は全く充足していません。それに気づいてしまったハンクは、虚無顔を晒します。
ビリー・ボブ・ソーントンの演技とサム・ライミ監督の演出が大変冴えた一本です。
人生は選択の連続
愛する妻と慎ましい生活ながらも幸せな日々を送るハンク( ビル・パクストン )と無職で独身の兄ジェイコブ( ビリー・ボブ・ソーントン )と親友のルーが、ひょんな事から440万ドルを手にするが … 。
このところ続く円安( 1ドル =160円 )、440万ドルを円に換算すると7億円に 👀
かなりの大金ですね!
粘ついたアクの強い演技が印象的なビリー・ボブ・ソーントン、アンジェリーナ・ジョリーと結婚していた事もある役者さんなのですね。
偶然手にした大金に翻弄される彼らの姿を通して、人の愚かさ、お金の持つ怖さと魔力を描いた作品。
BS松竹東急を録画にて鑑賞 (吹替版)
【汚れた金を”拾ってしまった”兄弟と友人が人生を狂わされて行く様を描いた作品。貧しくとも善性溢れる主人公の弟が良心の呵責に耐え兼ね、ラストシーンで兄に言った言葉は忘れ難い作品である。】
■小さな田舎町で妊娠中の妻サラ(ブリジット・フォンダ)と慎ましく暮らしていた会計士ハンク(ビル・パクストン)は、ある日兄のジェイコブ(ビリー・ボブ・ソーントン)とルー(ブレント・ブリスコー)と共に、森に墜落した自家用機の中から440万ドルもの現金を発見する。
その金を自分たちのものにしようと考えたハンクたちは、あるシンプルな計画を実行に移す。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・それまで、平穏に暮らしていた人たちが、汚れた大金を”拾った”為に、人生が狂って行く様を、サム・ライミが見事に映像化した作品である。
・まともに働いているのはハンクのみで、父の死の後、細々と暮らしているジェイコブ(だが、この男が劇中では最も人間の善性を持っている事が映される。)と酒飲みで借金だらけのルー。
・440万ドルの現金を、上から目線で自分が主導で、隠すハンク。
ー 彼は自覚無き、兄とルーへの優越感を持っている。妻もおり、子供も生まれたばかりである。更に、彼らの行動を怪しんだドワイトを事故に見せかけて殺してしまうのである。-
・ルーは金が入る事を当てにし、自堕落な生活を送るが困窮極まり、ハンクに分け前をよこす様にライフルを構えて威嚇するシーン。
ー 2階から降りて来た妻は、ハンクに対し発砲した夫に仰天し、その間にジェイコブがルーを撃ち殺す。妻はハンクに対し、台所で拳銃を向けるがハンクは彼女をライフルで撃ち殺し、夫婦間での諍いが起こっと見せかける偽装工作をする。ー
■この頃から、ジェイコブは良心の呵責に苦しむようになり、酒浸りの日々を送るが、ハンクは妻サラの的確な助言もあり、ギリギリ平常心を持って過ごす。
印象的なのは、サラが全てを理解した上で、何もない町を出るために、夫を叱咤激励する姿である。そして、彼女は頭も切れるのである。-
・ある日、”FBI"のバクスター(ゲイリー・コール)が保安官カール(チェルシー・ロス)の元にやって来る。
ー 実は、この男が令嬢を誘拐して殺害し、440万ドルを手に入れた兄弟の一人なのだが、サラはそれを新聞で察知し、ハンクに”一緒に行っては駄目!”と連絡し、更にジェイコブに観連絡をするのである。-
<雪の中のラストシーンは壮絶だが、印象的だ。バクスターは背後からカールを撃ち殺しハンクも殺そうとするが、そこに現れたジェイコブは、バクスターを撃ち殺す。
だが、彼は”もう、自首する。耐えられない。俺を背後から撃って良いよ。”と言ってハンクに背を向けるのである。
ハンクは躊躇しつつも、ジェイコブを撃ち殺すのである。
だが、シニカルなのは別のFBI捜査官が”多くのドル札の通し番号は控えてある。犯人が金を使えば、そこで犯人は捕まるのだ。”とハンクに言うシーンである。
そして、ハンクはサラの制止を振り切って、総ての札を暖炉で燃やして行くのである。
今作は、汚れた大金を”拾った”人たちが人生を狂わされて行く様を、雪深い背景の中描いた逸品なのである。>
現実的で冷たく怖い物語
久しぶりに飛行機内で観ることができました。
雪の積もる凍てついた田舎町が舞台でふたり兄弟と友人が墜落した小型機から大金を見つけてしまうことで始まる物語です。
「もし宝くじが大当たりしたら」、「もし大金を拾っちゃったら」など誰もが考える空想ですが、本作はその正解のひとつになると思います。440万ドル(現在のレートで約6億3642万円)もの大金を得てしまった時、果たして万事無難に乗り切ることができるでしょうか。
本作は極めて否定的な答えを導き出していますが、そうなる可能性は極めて高く、もし得ても両手放しでは喜べないでしょう。
もし大金を見つけてしまったら迷わず警察へ届け出ましょう。ネコババするとこのハンク夫妻やジェイコブの様に地獄を見る事になるかもしれません。
尺は少し長いですが、キャストの名演が光る誤魔化しのない名作だと思います。
主人公の兄弟役を演じる2人の演技力が素晴らしく、実にリアリティーのある作品。
つらい結末は容易に想像出来たが、ここまで酷い結果になるとは思わなかった。主要な登場人物はほぼ4人だけで、彼等の会話(4人が揃うことは一度もない)の積み重ねでストーリーが進んでいく。主人公の兄弟役を演じる2人の演技力が素晴らしく、実にリアリティーのある作品。
お金が人生を狂わせる
田舎の三人組の男が、墜落したセスナ機を見つけ、機内から大金を見つける。
とりあえず一人が管理することになり、内緒にしようとなる。
もとは善人だけど、狂っていく男たちが悲しい。
大金を発見したことによって3人の人生が狂っていく。 3人とも馬鹿な...
大金を発見したことによって3人の人生が狂っていく。
3人とも馬鹿なことばかりやるので、ツッコミどころ満載だ。
さらに主人公の奥さんもまたしょうもない入れ知恵をするから収拾がつかなくなる。
大金を発見して警察に届けずにネコババしようとしたのが一番の間違い。
もっとも、あっさり届けてしまったら映画にならないが(笑)
唯一正しかった行動は、偽FBI捜査官をためらいなく射殺したことくらいか。
あれだけ悪事をはたらいて逮捕されなかったことが奇蹟だ。
原作既読。どっちも好き。
劇場公開時鑑賞。そうでした、ライミが監督でした。
ビリー・ボブ・ソーントンを冴えない兄貴に配役した時点で勝利。もっと映画に出てくださいな。
この平凡な生活から転げ落ちていく感じ、『ファーゴ』は笑えるけどこれは笑えない。もうこの先一生ああしていれば、こうしていればと考えながら、生きていかなければならないなんてほんと笑えない。死ぬまで罪の意識に苛まれ続けるなんて、耐えられない。
男女論
いろいろ抜けたばかな男共。なぜそんなに軽々しく妻に話を振るのかとイラッとしたら、正論の舌も乾かないうちに、トーンは変えずに豹変したことを語りはじめる妻。バーで酔ったルーに絡まれずに済んだ女性とやっぱり絡まれる男性。ルーの嫁が語る殺傷力ある極上の嫌味。吹っ飛ぶ前にピストルで暗闇から撃ち返すとはしたたか。「もしも…」的な話にかこつけて男女論をぶちまける。
そんな頭の回転を得るために勉強してきたのか?と思える弟と、愚鈍に見えて時に鋭い切り返しでギョッとさせる兄。学歴論にも踏み込む。虚実入り乱れるルーの家でのサスペンスなやりとり、ビリーボブソーントンの名演がひかる。
永久保存版🙆♂️
日常生活の中で起きたある出来事をきっかけに、歯車が狂う。悪い展開から逃れようともがく程、更に地獄に引きずりこまれていく。悲惨な暮らしから抜け出すはずが全て裏目に。サスペンス好きにはたまらない作品。監督のサム・ライムはこの後、ホラー映画で更に頭角を現す。ドント・ブリーズ、スペルも面白かった。マーベルのスパイダーマンシリーズも手掛けたこの監督は凄い。
3人の中でお金を盗むことに一番反対していたはずのハンクが、最終的に...
3人の中でお金を盗むことに一番反対していたはずのハンクが、最終的にはお金への執着によってどつぼに嵌っていくのがなんとも皮肉。ハンクがお金を持ち帰る方に傾いた理由は、妻ともうすぐ誕生する我が子のために今より豊かな生活をと望んだからだけど、お金を守ろうとすればするほど家庭は壊れてゆく。しかも犯したリスクは最終的に水泡に帰す。残ったのは罪の意識と嘘を隠し通すストレスのみ。悪いことはできないですね。。。
普通の人が1番怖い・・・
大好きな映画です! 大金を見つけたら誰でも自分のものにしてしまおうか嫌でも少しは頭をよぎりますよね・・・田舎町で人気がないならなおさらです。 奥さんのサラが言っていた「発見場所に少しだけ戻すのよ、十分大金だと思えるだけの量を、次に見つけた人はそれで全額だと思うわ」というセリフ、頭がいいなあと思いました、悪いことですけど(笑) お金があれば色々な心配事がほとんど吹き飛んじゃいますもんね、子供の服がお古ばかり、図書館?の仕事の不満、外食時の不満、店長になれない夫への不満、義兄ジェイコブへの不満などをぶちまけるシーンが印象的でした、幸せな生活だったはずなのに心のどこかにはこんなに不満があったんですね・・・お金さえ見つけなければ裕福でなくともあのまま幸せにいれたのか、お金を見つけなくてもいつかサラが不満をぶちまけたのか、実際に世の奥さん達もたくさん不満があるのでしょうね、心から幸せにしてあげるのは大変です、僕は独身ですが(笑) サラの方がお金に執着していくのが納得でした、世の中お金持ちの男が重宝されるわけだ・・・サラが不満に思っていたこと全部解決できますもんね。 ハンクとサラが1番まともだったはずなのに1番狂ってしまったのが「大金て怖いな」と思いました。 ジェイコブが言っていたセリフが全てですね「お金なんか見つけなきゃよかった・・・」
欲望と罪悪感の相関図
誰もが顔見知りと言えるほど、雪に埋もれた田舎町。
Jacob・Hank兄弟とLouが偶然大金を発見したことから、少しずつ人間性が崩れていく様子が生々しいです。
キツネが鶏を襲うのも、カラスが死骸をつつくのも、豪雪地帯でただ胃袋を満たして生き抜くため。
でも人間は?
これも目覚めた本能なのか??
そもそも見るからに幼稚で危なっかしいLouやJacobと共犯になってしまう時点でダメなのですが(^^;)、最も常識的に見え、最も社会的に信頼できそうなHank…を操る妻Sarahに最も罪悪感がありませんでした。
Jacobが望んでいたものは…Hankが当たり前のように既に築いたもの。Hankが毛嫌いするLouは、Jacobのたった一人の友人。大金があれば農場と温かい家庭が手に入るのか。そのためにLouを裏切るのか。Jacobが段々と孤独に青ざめていくのがとても切なかったです。
雪は犯罪の足跡を埋めても、夫婦間の溝はそうたやすく埋まらず、雪解けで罪悪感を洗い流すこともないようです。
Jacobのワンちゃんはどうなったのかな…。
“Nobody would ever believe that you'd be capable of doing what you've done.”
大金は人をそして人生を狂わす。 普通の生活をしていれば善人であった...
大金は人をそして人生を狂わす。
普通の生活をしていれば善人であったろう主人公夫妻が、崩れていく様が面白い。そこに少々やばい兄とその友人がからみ、結末まで一体どうなるのだろうかと目が離せない。
自分が同じ境遇に陥ったらどうだろう?理性を保てる自信がない(笑)
ところで大好きなリトグリが紅白初出場を決めた。おめでとう!何を歌うんだろう、楽しみです。その歌声は名作映画同様、感動必至。みなさん、要注目!
悪さを隠せばバチが当たる
日本どころか世界中でも常識的な事が
悲劇を産み出して行く。
結局多くの人間は金の魅力に勝てず、
そのせいで不幸な選択をしてしまう。
この主人公もご多分に漏れず
不幸のデッドコースター状態。
なんともやるせない悲しみが
観たひとを包み込む。
多少話の展開に無理がある場面もあるが
キャスティングされた役者のうまさと、
監督の構成力により全体感が損なわれる
事なく最後まですすむ。
続く不幸のドロップダウンは悲しい。
だけど罪は償うべき。
※世の中悪人多いけどさあ
これも世の摂理。
●金がひとを変える。
人生に「たら・れば」はない。
ひとつの判断ミスが傷を深くしていく。
一難去って、また一難。
心理的に落ち着く間がない。
雪山とカラスのモノクロ感がまたうら寂しい。
兄ちゃん、あんた、いい人よのう。
嫁さん、あんたも悪よのう。
面白かった
レンタルビデオで見て以来で見返した。『ファーゴ』と混同しがちな映画。
奥さんの意見がことごとく最悪な結果を招くところが実にリアルだった。あいつが一番最悪だった。
兄弟の友達の失業者の奥さんも最悪で、ショットガンでぶっ飛ばされる場面はスカッとした。
犯罪を犯したら、二度と現場には近づかず、余計な小細工はしないに限る。とても勉強になった。
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