「今だからこそあらためて再鑑賞しよう」シンドラーのリスト かいくんさんの映画レビュー(感想・評価)
今だからこそあらためて再鑑賞しよう
25年以上前に前職での海外出張で東欧に半月程滞在したことがあり、大半はポーランドに居ました。第二次大戦中、ナチスが行ったホロコーストの象徴と言われるアウシュヴィッツ強制収容所が在った現在のポーランド南部オシフィエンチムへ日帰りで行ったことがあります。映画「シンドラーのリスト」の撮影地が当時、私の滞在していたクラクフであり、ここクラクフは古城があるヴィスワ川に囲まれた美しい古都でした。
しかし、映画は悲惨な内容で、ユダヤ人への迫害とナチスの人道無き暴力がこれでもかとあからさまに描かれています。
監督のスピルバーグはモノクロの方が説得力があるという判断から3時間以上の長編モノクロ映画となっていますが、ラストのシンドラーの墓前までの行進だけがカラー映画になります。また見逃してしまいがちですがろうそくの炎とゲットーの解体の時に現れる少女の着る赤いコートだけがカラーで描かれていることが分かります。しかしいくつかのシーンの後、この赤いコートを着た少女が、多くのユダヤ人の遺体の山の中にいるのが分かります。人間の命の尊厳や生の実感をモノクロからカラーに変えて観る私たちに訴えているとのことです。切なくて悲しい場面ですが鑑賞した際はぜひ見つけてください。
元アウシュヴィッツ強制収容所は負の世界遺産ですが、全く観光地化されていなく、広大な平原に残る収容所の建物は毅然と存在していて、ホテルも土産屋も売店も無い質素な場所です。ここで多くの人間が亡くなっていったという暗い雰囲気や押し付けがましい宗教色は皆無でそれがかえって訪れた者は寂寥感に襲われます。
主人公シンドラーは当初は金儲け目的の実業家としてクラクフに赴きましたが、ホロコーストの現実を知り、私財を投げ打ってユダヤ人の命を助け続けました。
戦争が終結し、年月が経ち、シンドラーが救ったユダヤ人たちがシンドラーの墓前に向かいます。多くのユダヤ人が実在の姿で行進しています。
ここで涙腺が崩壊します。戦後の現時点なのでモノクロではなくからーなのだと合点がいきます。
今、ロシアのウクライナ侵攻により罪のない住民や多くの子供たち亡くなっています。80年前には隣国ポーランドではホロコーストで150万人以上のユダヤ人が亡くなっています。
人殺しの戦争はいつになったら無くなるのでしょう。いつまで同じ過ちを繰り返すのでしょう。
この映画は戦争の愚かさと命の尊さを教えてくれます。
この「現在」だからこそ近日中に再びこの「シンドラーのリスト」を観ようと心に決めました。