劇場公開日 2025年7月19日

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「主な舞台になるリスボンの旧市街、アルファマに注目」白い町で 清藤秀人さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0 主な舞台になるリスボンの旧市街、アルファマに注目

2025年7月31日
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知的

石油タンカーの機関士、ポールがリスボンに寄港し、小さなバーを併設したホテルを起点に街を散策する。リスボンは太陽と人間味溢れるヨーロッパ大陸西端の街で、特に、正反対の気候と風土を持つスイス人やオーストリア人に人気の観光地だ。何よりも、白い家屋が太陽に反射して、訪れる人々を白で包み込むところが旅情を掻き立てる。ポールもまた、街のあちこちで撮った8ミリフィルムに手紙を添えて、それをスイス人の恋人、エルザに送りながら、次第に眩しい白に幻惑されていく。。。

かつてこれほど、背景が物語とリンクする映画があっただろうかと思う。特に、主な舞台になるリスボンの旧市街、アルファマは、今でこそ複雑に曲がりくねった狭い道路スレスレに走る路面電車や、丘の上から望む港の景色が有名だが、映画が公開された当時はそのエキゾチックな風景に息を飲んだものだ。今回、公開されて40年目の節目の年に4Kリストア版が公開されるのは、少しでも多くの観客にこの映画の魅力を再発見して欲しいという願いが込められているような気がする。

リスボンは同時に、目の前に広がる大海原の遠くを眺めながら、まだ見ぬ大陸を思い描いた我々の祖先と繋がる夢追い人たちが住んでいた街。だからだろうか、通りを歩いていてこちらが日本人だと分かると親しげに話しかけてくるポルトガル人が多いのは。映画とは少しズレるけれど、本格的な夏休みを前に旅情報として加筆してみた。

清藤秀人