劇場公開日 1973年4月7日

「脚本家ダルトン・トランボの反戦と生命の尊厳を問うた畢生の映画」ジョニーは戦場へ行った Gustavさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5脚本家ダルトン・トランボの反戦と生命の尊厳を問うた畢生の映画

2021年12月31日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館、TV地上波

監督のダルトン・トランボ氏は、約一か月前の9月10日にハリウッドの自宅で心臓発作により亡くなった。赤狩りによる弾圧に様々な困難を強いられた脚本家として有名であり、代表作に「栄光への脱出」「いそしぎ」「パピヨン」などがある。監督作品を他に聞かないので、今回が初の監督進出ではないかと思われる。それも長年温めてきた自作の小説『Johnny Got His Gun』1939の漸く念願叶っての映像化である。30年以上の波瀾万丈の時を経て処女小説を監督する、作家生命の集大成として感無量にあったと思われる。テーマの反戦主義は、この作家トランボの執念の想いが乗り移ったような圧倒的なメッセージを持つと共に、広くは人間の生命の尊厳について直接的に問い掛ける。これは、観る側も覚悟をしなければならない。
素直に感動するシーンもある。生命維持だけの植物人間とされたジョーが、暗い病室で光を浴びて、その温もりに反応する場面や、看護師が彼の胸に指で優しくメリークリスマスとなぞり、初めて意思の疎通をする場面など。これら、戦場で一塊の肉体になった病院内の現在進行場面は、モノクロ映像で撮られている。出兵前の恋人とのエピソードの冒頭シーンと、少年の日々を追憶するエピソード集や幻想シーンは、カラー映像で対比されているのだが、演出の観点から言えばこれが凡庸であった。映像の特質としてカラー映像の演出は、モノクロ映像より難しい。色彩設計から、光の配分、情報過多の絞り込みなど、演出の意図を構図に落とし込むのがモノクロ映像より求められるものが多い。結果論ではあるが、全編モノクロ映像であった方が良かったのではないかと思った。

それでも、ひとりの作家がほぼ半生を懸けて映画を制作した事実、それも戦争をテーマにした作品で人生が激変した歴史、そこにあるひとりの人間の生き方を知れば、この作品が描きたかった本質に少しは辿り着けるのではないかと思う。映画演出の評価を離れて、ダルトン・トランボ氏の作家証明になる畢生の“映画”であることに、尊敬と称賛を惜しむことはない。

  1976年 10月20日  高田馬場パール座

Gustav
Gustavさんのコメント
2022年12月8日

琥珀糖さんへ、
反戦映画では特別な存在の作品ですね。テレビ見学の初見では私も衝撃を受けて言葉がありませんでした。上記のレビューは、作品のテーマに敢えて深入りせず、客観的に創作までの過程と演出について感想をまとめたものです。一種の逃げでもあります。このような真摯で偽りの無い映画がもっと知れ渡るといいのですが。

Gustav
琥珀糖さんのコメント
2022年12月7日

この映画を観て、かなりのショックを受けた記憶があります。
〉戦争で一塊の肉体になった・・・ジョニー、
戦争の悲惨を描いてる反戦映画の傑作だと思いました。
(・・・今思うと少しのやり過ぎ感はありますかね)

琥珀糖