劇場公開日 2023年5月5日

  • 予告編を見る

「POVの原点にして、完璧なフェイク映画!」食人族 だいふくさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0POVの原点にして、完璧なフェイク映画!

2023年9月17日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

怖い

この映画、ある意味すごい映画と思う!

ホラーやグロい映画は、これまでにどれだけ観てきたか分からないのですが、本作を観たときは正直度肝を抜かれました。見終わった後の、気分の悪さは相当凄かったです。1983年製作でCG技術も無いこの時代の作品なのに、非常にリアルなのです・・・。

それもそのはず、“POV(Point of View Shot)”という、いわゆるカメラの視線と登場人物の視線を一致させるようなカメラワークの手法がありますが、実はPOVの原点は『食人族』ということです!

この時代の人々にとって、POVなんて技術知る由もない。16ミリカメラで撮影されている上、完全にドキュメンタリー映画として宣伝されていたので、当時の人々は真実の映像としてとらえてしまったのです。もちろんフィクションでありフェイク映画ですが、インターネットなども普及仕切っていない時代に、残酷映像なんてものに耐性がない人々が映画館で観たと思うだけで…。

もちろん今観ても非常にリアルなのですが、特に一番気分を害したところは、亀の解剖です。なんでも本物を使用しているらしく、亀の内臓を生で役者が食べるシーンあります。本国イタリアでは、動物愛護団体からのクレームにより上映禁止まで食らっているのです。ちなみに監督談ですと解剖した亀は、おいしくいただいたとのこと…(いやいや、そこじゃないでしょ!!!)

ジャケット写真にも出てくる、超有名シーンの女性が串刺しにされている場面があります。あまりのリアルさに当時は本物と信じて疑わない人が多発したとのこと。しかし現実は自転車のサドルに腰かけた女性に発砲スチロールの木をくわえさせただけらしいです。ネタをばらせばなんでもないんですが、信じる人が出るほどの素晴らしい技術なんですよね!

この映画のイカレっぷりは、単にリアルなグロ映像だけでないんです、一番の気分を害した理由は撮影しているレポーター達の残虐さです。撮影にリアリティーを出すため嘘の演出を入れるのです。民族同士の戦いと見せかけ民族が居る家を焼き払い嘘の戦いを作る、妊娠中の女性の子宮を切り取ることを強制的に実行させる、老婆をワニの餌にする、しまいには民族の女性を木で串刺しにしてしまうのである。これには、気分を害さずには居られないです。挙句の果てには、仲間が食人族に捕らわれ、喰われる様子もしっかりちゃっかり撮影・・・。

そしてこの暴挙の途中にかかる音楽が心にしみわたる優しい名曲 !
ん、ん、ん???優しい名曲???
待って待って!このシーンでなぜほっこり曲!?

これには監督の悪意が感じます。めちゃくちゃ良い曲なのですが、曲の使いどころ間違っている…。

だいふく