「タランティーノらしい犯罪の軽い扱い方が楽しい」ジャッキー・ブラウン Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)
タランティーノらしい犯罪の軽い扱い方が楽しい
総合:75点 ( ストーリー:75点|キャスト:80点|演出:75点|ビジュアル:70点|音楽:70点 )
殺しを含む犯罪行為が陽気で簡単な日常行為として取り扱われて、実に軽ーく描かれる演出がいかにもタランティーノらしくて楽しい。保釈金を出してもらえて保釈されたクリス・タッカーが、いつもの彼らしく調子よく大喜びして抱き合った後の場面では、もう車に積まれたただの死体になっていて姿すら写されない。こんな重大行為をまるで粗大ゴミの処分程度の扱いであっさりと流してしまうのが、人をくったようで面白い。
そしてそんなように人命を軽く扱い犯罪行為に対する罪悪感もないままに権勢を振るう強いものを相手にした逆転計画があり、大勢の人をどのようにして裏をとっていくのかを見せてくれる。もっともこの話は、犯罪者がこちらの予測どおりに動いてくれるとは限らないのに計画の範囲におさまることが前提になっている。銃を持ち殺人を厭わない相手はいつ暴走するかわからないはずで、そんな物語は都合が良くて強引ではあるが、それでも犯罪計画の筋としては通っている。
無駄なまでに出演者は豪華。前述の登場後数分で消えるただの殺され役のクリス・タッカーもそうだが、けっこうポンコツのロバート・デ・ニーロを見るのも新鮮。馬鹿情婦はブリジット・フォンダだし、サミュエル・ジャクソンの犯罪者ぶりは板についていた。主人公のジャッキーのパム・グリアは悪くないが、しかし保釈金融業者のマックスを演じたロバート・フォスターは平凡。
【2017/08/20】
過去にテレビ放送された短縮版を観て感想を書いたが、完全版を観てみた。すると登場人物のより多くの行動が描かれていて、特にマックスのジャッキーに対する態度がよくわかって面白みが増した。ジャッキーに引かれながらも自分の現在の生き方を外れず距離を保つ彼の節度が、結末に少々の寂しさと余韻を残していた。追い詰められたジャッキーの、あえて虎口に飛び込む度胸にも感心した。