「片っぽの靴はどこに隠してたんだ?」ジャッカルの日 TRINITY:The Righthanded Devilさんの映画レビュー(感想・評価)
片っぽの靴はどこに隠してたんだ?
フレデリック・フォーサイスの原作を巨匠フレッド・ジンネマンが映画化したクライム・サスペンスのマスター・ピース。
伴奏を極力廃した場面が淡々と続くのは、ノンフィクション出身の原作者の作風を加味してのことなのだろうか。
端正な容姿の英国人俳優エドワード・フォックスが悪役(殺し屋)でありながら主人公というのも本作の特徴。
何度追い詰められても危機を脱し、綿密な準備のもと着々と標的に迫る「ジャッカル」の沈着ぶりに、作品の臨場感に惹き込まれた見る側の視点や主観が翻弄される。
本作の大ヒットを受けて多くの派生作品が登場するが、なかでも強い影響を受けているのが日本のエンドレス・コミック『ゴルゴ13』。
偽造パスポートの手配師や銃器改造のプロ、仕事前に行きずりの女性と接触したり、必要なら関係した相手にも手を下す冷酷な一面など、本作には『ゴルゴ13』のエッセンスが満載(もっとも作品の誕生は同作の方が先なんだけど)。
クライマックスのミスショットが、外国人スナイパーを雇ったせいでフランス流のキスの挨拶を知らずにしくじるという「オチ」に、今回の放送も含めどれだけの人が気付いただろうか。
ひょっとして「ジャッカル」をフォックスが演じてるのも欧米流のウィット?!
スマートな「ジャッカル」と対称的にコロンボみたく風采のあがらないルベル警部(こっちはカミさんいます)の敏腕ぶりも見どころだけど、高層階のアパートに潜む犯人にたどり着くまでが簡単すぎるのが難点。
フランスでロケを張ってるのに会話がすべて英語なのも、あらためて観るとやっぱり残念。
当時のハリウッド映画なら、こんなもんなのかも知れないが、今観るとリアリティに欠ける。
NHK-BSにて視聴。

