「1950年代を代表する傑作。ジェームズ・ディーンの遺作です。」ジャイアンツ 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)
1950年代を代表する傑作。ジェームズ・ディーンの遺作です。
ジェームズ・ディーンの出演作はたったの3本。
「エデンの東」(1955年)
「理由なき反抗」(1955年)
この2作品は、かなり以前に観ています。
本作「ジャイアンツ」(1956年)を撮り終えて、
ディーンは24歳の若さで交通事故のため世を去ります。
そんなことは差し引いても、文句なしの名作映画でした。
監督:ジョージ・スティーブンスはアカデミー賞・監督賞を獲得。
物語は30年に渡るベネディクト一家と牧夫だった男の歳月を辿った
大河物語。
3時間20分の堂々の大作ですが、
劇的な展開が次々と起こりテンポが速い上に巧みな語り口。
そして出演俳優の魅力と熱意・演技力で非常に面白かったです。
ストーリー
1920年代半ばから1950年のテキサスの大牧場を舞台にした
人間模様を描いています。
人種差別、拝金主義と精神的な満足、夫婦の考え方の相違と教育感の違い、
などに焦点を絞っています。
テキサスに59・5万エーカーの土地を持つ“ビック“ことベネディクト
(ロック・ハドソン)は、
馬を買い付けに行った東部の名門の娘レズリー(エリザベス・テーラー)と、
互いに一目惚れして速攻で結婚します。
レズリーは鼻っ柱の強い娘で、新婚早々揉め事や口喧嘩が始まります。
レズリーは新婚お披露目パーティーの帰り道を牧場手伝いのジェット・リンク
(ジェームズ・ディーン)に車で送って貰う途中、
使用人のメキシコ人が居住する貧しい地区に立ち寄ります。
そこで40度の高熱で重症の赤ちゃんを見兼ねて、
ベネディクト家係り付けの医師を派遣して命を救います。
レズリーとジョーダンの最初の口喧嘩が、
「テキサスのあなたの土地は、先住民のメキシコ人から盗んだ」
との内容でした。
事実、広大な土地はジョーダンの祖父が、
1エーカーをたったの5セントで買い取った土地です。
このようにレズリーはとても正義感が強く、しかも慈善の心を持つ女性。
生粋のテキサス男のジョーダンとは、そりが合わないのですが、
2人は互いを深く愛しています。
そんな時、牧場を女王のように仕切っていた姉が、落馬して亡くなります。
変わり者で偏屈なジェットを可愛がっていた姉の遺産が1200ドル、
ジェットに残されます。
それを元手に石油掘りをはじめるジェット。
(ジェットはジョーダンの若妻レズリーを一目見たときから、
恋しています。叶わない恋です)
一方でレズリーは男女の双子を出産。
泣き虫で怖がりの長男は馬を怖がります
教育方針で揉めるレズリーと“ビック“
怒ったレズリーは実家の東部へ里帰りします。
寂しさに耐えきれずクリスマスの日に迎えに来る“ビック“
その実家のクリスマス。
双子の娘と息子、そして次女の3人が、可愛がっていた七面鳥の
丸焼きが食卓に載り《大泣きする3人の子供たち》
レズリーの心の優しさは特に長男のジョーダン3世に引き継がれるのです。
そしてジェットの土地の原油が突然何十メートルも噴き上げる。
ジェットは遂に油田を掘り当てて、大金持ちの石油王になるのです。
インターミッション
子供たちは成人して大学生になろうとしています。
博愛精神を母から受け継いだ長男(なんとデニス•ホッパー)は、
医師になりメキシコ人居住区の診療に当たり、差別されるメキシコ人を
妻として迎えるのです。
そしてジェットを忌み嫌っていた“ビック“も、遂にジェットの提案を
受け入れて自分の土地から油田を掘り、更に豊かになりますが、
牧場経営はジョーダンの心の支え。
ところが牧場の跡取りを長男は拒否して医者になるし、
娘は夫と小規模牧場の経営を2人で始めるというのです。
“ビック“の夢はことごとく子供たちから裏切られます。
そんな折り、
今ではテキサス最大の金持ちで石油王からホテル王へのしあがったジェット。
ホテルの落成式がハリウッドスターや知事を呼んで、
盛大にホテルでのパーティーの日が来ます。
“ビック“ファミリーは自家用ジェット機で乗り付けます。
ところが長男の妻が美容院でメキシコ人を理由にセットを断られます。
怒ったジョーディ(デニス・ホッパー)は、ホテル会場でジェットに
殴りかかるものの、逆に張り倒されてしまいます。
それを怒った“ビック“は酒の貯蔵室でジェットと対決。
パーティーはめちゃくちゃ。
そしてジェットは呟きます。
「自分のような卑しい者が、油田を掘り当てて、分不相応の財産を手にした」
そして如何に、
「レズリーを愛して、恋焦がれた一生だったか!!」と、嘆きます
更に帰路、立ち寄った「ハンバーガーとフライドチキン」の店。
ここでもメキシコ人の嫁と孫は入店を嫌われるのです。
“ビック“の取りなしでなんとか食事中、別のメキシカンが入店。
店主は断固としてメキシコ人を拒絶。
怒った“ビック“は店主と大乱闘!!
無事、テキサスの自宅に帰ったレズリーは、
夫“ビック“を今まで一度もなかったほどの優しさと慈しみと尊敬を込めて、
言います。
バーガー店で差別と闘う夫“ビック“
「あの時のあなたが今まで25年間の結婚生活で一番素敵だった」と、
メキシコ先住民の土地を奪い、安い賃金の労働力として利用して、
医療も与えないのが当たり前。
メキシコ先住民を差別して利用して来た“ビック“が、
今ではメキシカンの嫁と、混血の孫を慈しんでいる。
レズリーの努力は遂に実を結んだのです。
この映画でロック・ハドソンのデカさが半端なく、調べたら195センチ。
ジェームズ・ディーンは171センチ。
大男と小男みたいでしたが、トム・クルーズ同様にとても素敵です。
そしてジェームズ・ディーンの老け役。
50代の役作りは若造のそれではなかったですね。
“ビック“への劣等感とレズリーへの報われことない恋心を秘めた
金が巨万と有り余ってても虚しい人生を、的確に演じていました。
本当に早世が悔やまれる惜しい俳優でした。
「ジャイアンツ」
この映画で“巨人“とは誰だったのでしょう?
深刻な内容も明るくテンポ良く、展開も速い。
テキサスの抜けるような青空とエリザベス・テーラーの美しさと貫禄。
ラストで、
「良い映画だった」と微笑みを噛み締める名画でした。
琥珀糖さん、コメントと共感ありがとうございます。
丁寧なレビューを拝見して、改めて気付かされました。ロック・ハドソンとジェームズ・ディーンの身長を指摘されていますが、これも上手く役柄に合っていると思います。ジャイアンツに相応しいハドソンの体格が、身も心も大きな人間になる主題に適しています。それを含めてのキャスティングだったのかも知れませんね。大変だったのは相手役エリザベス・テイラーとのツーショットで、約40センチの身長差をアップカットでは補助台か何かで修正していました。「シェーン」のアラン・ラッドで経験済みのスティーヴンス監督ですから、自然に編集していて気にならないですね。
それと、クリスマスの七面鳥のシーンが微笑ましくも笑ってしまいますが、これもラストカットを意義付ける意味で深いですね。子供の頃の動物愛、そこには偏見も差別もありません。生まれた時は皆が同じく平等であるを、ユーモアと慈愛のテイストで印象付けて、ラストの子供たちのアップカットに繋げています。大泣きする子供たちも名演でした。
エピソードを一つ。まだ新人扱いだったジェームズ・ディーンは、大スターのエリザベス・テイラーとの共演にとても緊張していたといいます。それをほぐす為に、遠くに見学者がいる状況で、平原の撮影の合間に態と生理現象をしたというのです。ディーンらしい逸話ですね。