「大泣きしてしまった」自転車泥棒 らららさんの映画レビュー(感想・評価)
大泣きしてしまった
タイトルは聞いたことがある程度で予備知識ゼロでしたが、映画史上に残る傑作ということで見てみました。
失業者あふれる戦後すぐ、主人公はようやく仕事をもらえたものの自転車の所持が必須条件という理不尽。お金がないから仕事が必要なのに自転車がない人は仕事できないという。お役人が偉そうすぎる。
乳飲み子抱えた妻がシーツまで質に入れてようやく自転車を質から取り戻し…しかしタイトルは「自転車泥棒」だから盗まれることは分かっておりハラハラ。当時の自転車は鍵をかけられなかったなら盗まれ放題?
仕事初日にもう盗まれる悲しみ。その後まだ6歳の息子を連れずっと自転車探し続けるのだけど子どもの演技が非常に自然でうまい。名子役かと思いきやキャストは全員市井の人とかで。監督の指導も見事だったのでしょうか?
仲間と一緒に探すこととなり、ここから明るいコメディになるとかハッピーエンドも期待しましたが…。
主人公の目線が見事。台詞が少なくても主人公の焦燥や混乱がよくわかる。自転車さえあれば何とか家族が暮らしていける、犯人風というだけで証拠なく執拗に追いかけてしまう、妻には信じるなと叱りつけた占い師にすら頼ってしまう。
自転車は見つからない、自転車は街に山ほどあるにはある、自分も盗まれたから…と弱い心が揺れていくのがよく分かる。
主人公の場合は瞬く間に取り押さえられる。息子の前で醜態を見せ呆然として泣く息子と一緒に帰る…。
息子は強面に囲まれた時は警察を呼びにいき、父親が取り押さえられた時も泣いて父親に近寄ったことで許された。ちょっと頼りなげなお父さんより有能。
お父さんは当時の父らしさなのか息子を振り回してお礼も謝りもしないし、頻繁に1人にして危険な目に遭わせてる。
泥棒が発生したら他人事じゃなく皆で取り押さえるとか、教会の炊き出しがあるのは町として少しだけ安心できるが。
しかし主人公一家は困窮したまま。お父さんはしばらく自分がしでかしたことからも立ち直れないかもしれない。
まさか、ここで、終わり…?というところで本当に何の解決もなく終わり、あまりのリアリティに号泣してしまった。