シシリーの黒い霧のレビュー・感想・評価
全2件を表示
亡命監督がシビアに見る「 山賊の終わり方」
話が 時系列を無視して 前後するので、我々には 分かり辛いが ヨーロッパの人々には ある種の緊迫感を与えるのだろう
イタリアは南北格差が激しく、シチリアはマフィアの起源となり モンテレプレでは山賊が生まれる
始まりは イタリア統一戦争による、南部併合、南部冷遇である
第二次世界大戦終盤の混乱と共に「南シチリア独立運動」が起こり、モンテレプレの山賊のリーダーである サルバトーレ・ジュリアーノは独立義勇軍に担ぎ上げられ、利用される
(マフィア+山賊+義勇軍)
独立後、山賊に戻り(特赦されず) 警察、憲兵、マフィアと入り乱れ 戦うことになる
ジュリアーノは 気性が激しく、特に憲兵は嫌いな様で(何回か射殺) 43年に関係者が多数拘束されると、憲兵詰所前で機関銃を乱射している また、 誘拐、強奪、殺人事件を多発させている
(マフィア<山賊)
(イタリア政府も 別途混乱中)
山賊一掃計画が 進み(←マフィア+警察+憲兵)
50年に ジュリアーノは 殺され、警察による射殺発表あり
後日、従兄弟のピッシェッタが殺人を自白している
(マフィア>山賊)
ピッシェッタは警察、憲兵と近しく 自白による無罪を要求したが、認められず 独房で毒殺されている
(←マフィア ? )
かくして、マフィア、警察、憲兵(政府)の 黄金のトライアングルが 完成する
ジュリアーノ死体別人説もあり、これだと ジュリアーノを売ったように見える ピッシェッタが犠牲になったとも 考えられる
とくに不思議なのは「ポルテッラ・デッレ・シネストレの虐殺」と呼ばれる、ジュリアーノ達の 社会主義者の集会への銃撃事件だ
(この裁判中にピッシェッタが殺人自白、山賊、マフィア、警察、貴族 との関係も 暴露)
(イタリア政府 引き続き、混乱中)
これらが、ジュリアーノ死体別人説とアメリカ亡命説が 語られる原因となっている
ジュリアーノが 義経伝説みたいに なってしまっている!
60年に この一件を知るマフィアが群衆の中で、殺される(← ? ? ? ! )
山賊、マフィア、警察、憲兵隊が 場合によっては協調もし、「籔の中」である
また、組織と個人の思惑の違いも ある
歴史学者らにより ジュリアーノ死体別人説の根拠が提出され、2010年に DNA鑑定され 却下されている(←が、まだ疑われている)
映画の中で 生存中のジュリアーノの顔を はっきり映さないのは、この説を考慮してである
アメリカから 亡命を余儀なくされた ロージー監督は マッカーシーイズムの犠牲者であり、政治の愚かさを知っているからこそ、我々の頭に 喝を入れる為に この映画を作ったのかもしれない
が、混乱する
戦後イタリアのぐちゃぐちゃ…
でも この混乱が 疑念を増幅させもする
やっぱり、もう一回 見なきゃ駄目かも…
見ても 駄目かも…
ずっと、考え続けるのは 確かで、サスペンスとしては 一級品か!
Siciliaの政治を動かした、ひとりの謎多き青年
SiciliaのMontelepreを7年間支配した山賊のリーダーSalvatore Giulianoの死の謎に迫りつつ、戦後も続いたシチリア独立運動や経済的発展の遅れを、社会派ドキュメンタリーのように描いた作品です。
Giulianoは取り調べを受けた時に憲兵を殺害し、その後山へ逃げて雲隠れした青年。身代金目的の誘拐、強奪、殺人などを犯すが、村人らに分け前を与えることで、貧しい地元ではロビンフッド的英雄視されていた一面も。仲間を大勢増やし、政治家、警察、憲兵、マフィアすら無視できない存在に。
Giulianoが死んだ1950年と、その数年前の経緯が行ったり来たりします。いきなり切り替わるので最初は着いて行けませんでした。後半ようやく名前が明かされる人物達も、実は最初からチラチラ映っています。生きているGiulianoは出てこないのか?!と思っていたら、白いコートをなびかせ率いている男です。右手に例の指輪をしています。
警察と憲兵隊の区別は最後まで(・_・?)でした…。
無学の貧困層が、政治利用され、見返りの約束を反故される一方で、彼らの暗黙の結束はどうにもほどくことが出来ない…。
判決文にそれが表されています。
“法の番人による暴力の行使は許されるものではない。だがある種の供述は、暴力をもってしても導くことはできない。” (真実を述べさせる法的手段がない)
これはこの山賊一味に限らず、警察、憲兵隊、マフィアの各組織、はたまた現代の企業や団体にも通じることかと。法より所属集団に忠実な人間が増えると、真相は永遠に闇の中。Siciliaの濃霧に覆われた歴史の断片には、繰り返される社会問題が垣間見えるような気がしました。
全2件を表示