「実はバカ映画」死刑台のエレベーター(1958) kkmxさんの映画レビュー(感想・評価)
実はバカ映画
サスペンスはあまり得意ではないのですが、本作はそんな自分にとってもなかなか楽しめる作品でした。
社長夫人と部下のやり手が、ジャマになった社長を殺すという導入ですが、実行犯のやり手がエレベーターに閉じ込められるというプロットは、意表を突かれて面白かったです。
さらに、やり手の車をパクったバカなカップルが行く先で事件を起こすというドタバタ展開は、シリアスな魅力は感じませんが、ブラックジョーク的な可笑しさは感じました。バカっぽいというか。
そして本作、登場人物もほとんどバカばっかりなんですよね!それ自体に笑ってしまいます。やり手も、やり手とは思えない雑な犯行+イージーミスで、おまけにエレベーターに軟禁されるという間抜け振りです。社長夫人もマズい表情で夜の街をウロウロするだけですし。
車を盗んだバカップルは絶望的なまでに知能が低いです。特に男は救いようのない激バカ。女の方は剛力彩芽っぽい無邪気さがバカさ加減を増強させてます。そして彼らとモメるドイツ人旅行者カップルも、常に鷹揚に笑っているという、なんでわざわざそんな造形にしたのか意味不明です。どこを切ってもヘンテコなんですよね。
なので、ルイ・マル自身が悪ノリしてキャラ造形したのかな、なんて想像してしまいました。一見、古典的な名作みたいな面構えですが、バカなコメディ映画としての側面もあるのでは、と感じています。
本作が語り継がれる作品になったのは、ずばりマイルス・デイヴィスのサウンドによるものだと思います。この変わった作品に格調を与え、品位を作り上げているように感じます。あの『プァ〜』というトランペットが入ると、グッと締まるんですよ。実に偉大です。
ジャンヌ・モローのクセのある美貌はなかなかグッと来ます。『突然炎のごとく』よりも若いはずですが、本作の方が成熟した色気を感じました。役柄はどっちもトンチキですけどね〜。