劇場公開日 1954年6月4日

「みんなが自分のことで精一杯な時代に贈られるプレゼント」山河遥かなり 根岸 圭一さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0みんなが自分のことで精一杯な時代に贈られるプレゼント

2024年12月23日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

 冒頭、戦争で傷ついた戦争孤児達の映像が痛々しい。戦争映画で取り上げられるのは前線の兵士達や大人の民間人であることが多い。だが、戦争がもたらした子供達の精神面に対する悪影響も、甚大なものであったことがここから分かる。そういった子供達の中の一人がカレルだった。だが、彼はスティーヴという気にかけてくれる青年の存在で救われたのが幸運だった。

 特に印象に残ったのは、カレルがスティーヴから新しい靴をプレゼントされるシーン。みんなが自分のことで精一杯で、他者を気に掛ける余裕も無い荒んだ時代。その中で、自分のことではなくカレルの気持ちを考えた愛のあるプレゼントを贈られて、カレルもこの上なく嬉しかったと思う。

 ラストシーンはこの時代の映画らしく割とあっさり終わるが、温かく良い映画だった。

根岸 圭一