「史上空前の大傑作アクション映画」ザ・ロック shunsuke kawaiさんの映画レビュー(感想・評価)
史上空前の大傑作アクション映画
80年代、90年代の時代の空気を象徴する映画ジャンルとは何か?
それは、まさしくアクション超大作である。
本当に馬鹿らしくも面白くて血湧き肉躍るアクション映画がそれこそ毎週のように公開されていた凄まじく活気のある時代だった。
この『ザ・ロック』こそ、数あるアクション超大作の中でも群を抜いて素晴らしい作品であると私は思う。
それは、ストーリーは馬鹿らしくても映像と音楽と演技が強力であれば、見るものの冷静な物の見方を吹き飛ばしてくれることを実証した本当に素晴らしい映画だからだ。
ストーリーは一見子供じみている。世界各地で非合法活動を命ぜられ、たくさんの命を国のために犠牲にしてきた軍人たちが、国から何の賠償もされずに怒り心頭に発し、武装蜂起して最強の化学兵器を軍施設から略奪し、テロリストと化す。ただ、彼らの目的は、金であるはずなのに、国を相手どり金がほしいということをはっきり言わない。テロリストとなった軍人たちの狂気の結束力はどこから生まれるのか?それは、エド・ハリスの板についた素晴らしい演技にある。
やっていることは、テロなのに、本当に心から信頼してついていきたくなるような、男らしくて、規律正しい軍人ぶり、テロリストとなった理由が国から惨めな思いをさせられた軍人の名誉を回復したいというある種の抽象的な意思で動いているので、金が欲しいという下世話な欲望は微塵も感じさせないのだ。
そして、ニコラス・ケイジの父親役に相応しいショーン・コネリーの優しい眼差しと力強さ、そして、それについていくニコラス・ケイジのまだひょろっとして青さの残る感じが凸凹だが、それ故にコミカルに2人を結びつけ、名コンビぶりが発揮されている。ともすれば無機質になりがちなアクション映画に色を添えている。ショーン・コネリーの強いお父さんぶりは、この人は絶対に死なないし、一緒にいれば絶対助けてくれるという安心感がすごい。
そして、誰もが語り尽くした着目点だろうが、マイケル・ベイ監督の映像のハイテンションぶりが凄まじい。カットの切り替わりの速さ、ところどころのスローモーション、ズームから俯瞰から四方八方からみせるカメラワークの多様さに圧倒される。同じ場所や俳優の顔をあちこちからとってしかもそれが次々に切り替わるために異常な緊張感、緊迫感を生み、このような馬鹿げたストーリーでも、緊張や緊迫感という強力な説得力をもたらしている。これこそが、観客に余計なことを考えさせずに映画の世界にのめりこませるこの映画における天才的な技である。
その緊迫感をさらにアップグレードするのが、ハンス・ジマ-、ニック・グレニー=スミス、ハリー・グレッグソン=ウィリアムズ3者によるサウンドだ。本当に素晴らしくて、こんなに人をストレートに興奮させる音楽があるのか?と思わずにはいられない傑作。アクション映画ファンなら誰もが一度は聞いたことがある映画サウンドである。
90年代を代表するアクション映画音楽で、この音楽があるせいで一流のアクション映画というオーラが一気にに漂う。使われ方もアクションシーンの随所にきっちりベストなタイミングで使われる。助けを求めるために発煙筒をたいて、太陽に直射されて影になったニコラス・ケイジのバックに現れるアルカトラズ爆撃の命をうけたジェット機の急上シーンとこの音楽の絶妙なマッチぶりとカッコ良さは誰もが記憶に残すところであり、このシーンだけで『ザ・ロック』は世界中のアクション映画ファンの興味を釘付けにした。
この映画がその後のアクション映画の撮られ方を決定的に変えていき、早く画面が切り替わるスタイルがあちこちに観られるようになった。(例えばジェイソン・ボーンシリーズやミッション・インポッシブルシリーズ、2000年代に入ってからの007シリーズ、96時間シリーズなんかのアクション映画の画面の切り替わりの速さはこの映画以降だ。プライベート・ライアンなんかの戦争映画でも同じような効果が際立っている。)
午前10時の映画祭でみたが、緊迫感が凄すぎて二日酔いや寝不足で観ると絶対に気持ち悪くなる。それくらい、画面がすごくて、後世の影響力のある凄まじい映画だと思う。