「芸術は爆発だ!」砂丘 たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
芸術は爆発だ!
屈折した思いを抱く青年とアンニュイな女性との一時の交流を描くアメリカン・ニューシネマ。
若き日のハリソン・フォードが出演しているらしいが確認出来ず。
出演シーンはカットされているとの情報もあるが詳しいことは不明。詳しい方がいれば教えてください🙇♂️
三大映画祭全てで最高賞を受賞したレジェンド中のレジェンド、ミケランジェロ・アントニオーニの作品に初挑戦!
娯楽映画とは対極をなす非常に芸術的な映画。
純文学的な作品と言っても良いかもしれない。
学生運動や物質主義に塗れたロサンゼルスを描く前半から、不毛な大地の続く砂丘地帯という閉ざされた空間での男女2人の心身の交流を描く後半へ。
そして終盤では物質主義的な都会へ帰還した青年の死と、資本主義の象徴ともいえるブルジョアやデベロッパーを豪邸共々爆破するという展開が描かれて物語は幕を下ろす。
都会という開かれている物質主義的な空間と、砂丘地帯という周囲からは閉ざされた生産性のない不毛な死の世界。
暴力と議論に塗れ、他者との関わりを持たなければ生きてゆけない世界から、社会から隔絶された世界へと逃避するという行為が、青年の心情と密接にリンクしているところが興味深いところ。また、結局世俗へと帰還した青年が社会に敗北するという展開が得も言われぬ寂寥感を醸している。
青年の殺した資本主義的な社会への報復として、そして自らもそのような社会との決別を示すため、資本主義社会におけるシンボリックな存在を崩壊させるというエンディングには、監督の主張が込められているのだろう。
同時に、爆発して宙に舞い上がった本や食料などをスーローモーションで映し、BGMにピンク・フロイドの音楽を流すという映像は非常にクールで芸術的。
しかし、クライマックスの爆破も結局は白昼夢に過ぎない。それは決して覆ることのない拝金主義的な世界、又は決して成功しないであろう学生運動への虚しさを表しているようだ。
まぁ何が言いたいかというと、アントニオーニの「君たちのやりたいことはわかる。でも学生運動なんか成功しないよ。」という若者へのメッセージがたんまりと詰まっているということです。
正直もっと静かで退屈な映画かと思っていたが、ピンク・フロイドやジェリー・ガルシアというレジェンド級のアーティストの手がける楽曲を聴くだけでもワクワクするし、空撮や爆発など映像的に凄いこともやってるしで結構楽しめた。
たまにはこういう高尚な映画も良いものですなぁ。