劇場公開日 1965年8月14日

「主人公の考えも行動も理解できた気持ちがラストで崩れた」コレクター(1965) talismanさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0 主人公の考えも行動も理解できた気持ちがラストで崩れた

2025年7月27日
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鑑賞方法:VOD

怖い

知的

ドキドキ

今まで見た中で最も若い時のテレンス・スタンプ。顔がふっくらとして青い眼が美しい。表情と体の動きとセリフのすべてが素晴らしい。スタンプ演じるフレディーも、彼が以前から狙いを定めていたミランダも上流階級の人間ではない。ミランダは奨学金で美大に通っている。専門は絵画。銀行員のフレディーは、同僚から蝶コレクションの趣味を馬鹿にされ苛められている。友達はいるように見えない。居るとしたら、お前のくじが当たった!と伝える為に、フレディーの職場へやってきて金額まで吹聴する叔母だけだ。こんな叔母はいやだ。

フレディーは周到な男だ。くじで転がり込んだ大金で、地下室や隠し棚もある大きな家を買う。地下室をミランダの部屋と決め、サイズはよくわからないが色の好みはわかっていて、たくさんのワンピース、下着、カーディガン、トイレタリーも調える。美術史の本に加えて、エル・グレコ、セザンヌ、ゴーギャン、カンディンスキーの画集も揃えておいた。丁寧に美しく完璧に作業するのは、蝶コレクターにとってはお手のものだろう。それがミランダには怖くて気持ちが悪い。本人は仕立てのいいスーツを着て、執事のように銀のプレートでミランダに朝食を運ぶ:紅茶ポット、銀のトースト立て、エッグスタンド、オレンジジュース。ノックを3回して入室、完璧。

面白かったのは、フレディーが声を荒げて小説と絵画を批判する箇所だ。ミランダが気に入って3回も読んだという『ライ麦畑でつかまえて』をフレディーも読み、ボコボコに批判する。主人公はまだ思春期の子ども、内実はフレディーと同じだからむかついたんだろう。そして次はピカソ批判。「変だ、こんな顔!」美しくシンメトリーな蝶を愛するフレディーにとっては有り得ない絵画だ。「Poshの趣味だ!奴らがいいと言うから、迎合して皆がいいと言ってるだけだ」と言う。フレディーの鬱屈が見えたように思えた。

音楽や音の効果、ドキドキする映像、二人の会話劇。古くささを全く感じなかった。面白かった。

talisman
Gustavさんのコメント
2025年8月19日

talismanさんのコメントでテレンス・スタンプさんの死を知りました。80歳を過ぎても映画に出演されて俳優人生を全うされましたね。5歳年上の盟友マイケル・ケインとは共演する機会が無く、一作品でもあったら良かったと惜しまれます。それでも立派な俳優人生を送られました。普通の会社員から役者を目指し演劇学校に通い、デビュー作「奴隷戦艦」(未見)で注目されたことは、やはり生まれ持った演技の素養があったのだと思います。この「コレクター」での演技でカンヌの演技賞を受賞していますが、出演に躊躇したあの「プリシラ」の演技はアカデミー賞に値すると個人的に思いました。ゲイリー・クーパー、マーロン・ブランド、ジェームズ・ディーンに憧れた、正統派で個性的二枚目イギリス俳優の一人として記憶に残ります。
追悼記事で「プリシラ」のバーナデット役でインタビューを受けた逸話に、(なぜテレンス・スタンプは魅力的なのか)と尋ねられて、(女性ならだれでも求める3つの魅力が彼にはあるの。面白くて、ロマンチックで、しかも賢い)と答えたとあります。可笑しくも、何冊も自伝を遺した文才に自信が溢れていますね。

Gustav
kossyさんのコメント
2025年7月28日

この映画は40年くらい前にテレビの深夜枠でよく放送されていました。
しかもサブタイトルがついていて、「コレクター(変態)」だったような・・・どんな変態なのか興味あった年頃だったので何度も観てしまいました。
コレクターの意味が「変態」だと勘違いしている同級生が数多くいました・・・

kossy