「辛い過去があるから...」この森で、天使はバスを降りた はむちん2さんの映画レビュー(感想・評価)
辛い過去があるから...
前歴がある主人公は、なぜ田舎町で働くことにしたのか。知人の誰も居ない場所で人生をやり直すため...そのくらいしか私には浮かばなかった。周りの「あの娘は何?」という視線に苛立ちながらも、困ったことがあれば手を差し伸べる「情」はある。そんな印象だった前半。
映画は「前がある主人公」ではあるけど、誰も知らない場所で人生をやり直す、作り直すというのは誰でも少し勇気があれば出来ることではある。なるべく心を無にして、目の前のことを黙々とこなしていくうちに色々な出来事があり、人との何気ない出会いから新しい人生が生まれていく...そう考えると、ワン・パターンの生活を送っている自分のような人間には新鮮で、憧れや希望が持てる感覚にもなった。仕事場や家族でも人数が変わったり、役割が変わるだけで風向きが変わることってある。そういう見方もできますね。
中盤は、なぜ森の中で隠れるように暮らす男に興味を持つのか、わからないまま進むけど、主人公の生活自体は順調そのもので少々退屈ではある。
人間関係って上手くいく期間って短いのかな。後半になると主人公を気に食わない人、依然として前科者として信用できない人などゴタゴタしてくる。たとえば一番の親友的存在マーシャ・ゲイ・ハーデンは、優しく控えめで自分の意見を言わない役だったが、主人公と出会って心が明るくなり新たな自分を見付けたのに夫は理解できなかったり・・・順調な後には決まって嫌なことが起きる、何か人生のバイオリズムを見た気がした。
派手な演出はないけど、観ているうちにジワジワと引き付けられる映画だった。
主人公は堂々と「やり直した」と言える終わり方だと思う。気付かないだけで実際に自分の周りにも居るんじゃないかなぁ。
辛い過去があるから、人に生きる力を与えられたのでしょう。