「静寂と暴力のすごみ」ゴッドファーザー ピンクマティーニさんの映画レビュー(感想・評価)
静寂と暴力のすごみ
言わずと知れた超大作をようやく鑑賞。しかし、薄暗い映像の中で繰り返されるのは、男たちの会合、家族の食事風景、そして暴力。報復の連鎖が続き、あぁ嫌だなぁと思っていたら、意味深なボス交代を示唆するシーンで終わったことで、これまではただの前振りで本題はこれから始まるのか!?と俄然パートⅡへの興味を掻き立てられた。
映画としては、とくにストーリーの山場も見せ場もなく、ひたすら日々の出来事と事件が繰り返され、まるでコルレオーネ一家のドキュメンタリー映画を観ているよう。少々退屈といえば退屈で、これが歴史に残る名作なのかと思いきや、コッポラ監督本人もそう思い、映画がヒットするとは思っていなかったとか。
この映画を名作にしているのは、マーロン・ブランドやアル・パチーノら俳優たちの存在感によるところも大きい。イタリア系は「目つき」で芝居する。マーロン・ブランドの垂れ下がった頬は宍戸錠を彷彿とさせる。マーロン・ブランドはよれよれの年寄りにしか見えなかったが、撮影当時弱冠48歳だったとかでのけぞった。この映画がこれだけ評価されたのは、イタリア系マフィアのプライベートな生活を含めた内幕を描いたものがなかったからか。イタリア系ファミリーの家族思いで義理人情に厚い精神性にも光を当てている。同時に、伝統的イタリア人男性のマッチョな考え方、女性と子どもには従順であることを求め、支配し、愛玩動物のように扱う態度などもしっかり描いている。殺人やDVなど暴力シーンも多く、女性が見て気持ちがよい映画ではないが、凄みとこの映画の存在意義は伝わってきた。
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