「生きている今を考える!」生きる(1952) ratienさんの映画レビュー(感想・評価)
生きている今を考える!
自分の生まれる遥か前の作品です。
黒澤明監督というと、自分の中では時代劇のイメージが圧倒的に強い。大画面でこそ見応え十分の迫力ある画面が印象に残ります。
そんな監督の現代劇。元々、このてのジャンルの映画を観る事も少ないのですが、ハリウッドでリメイクされたこともあり、ちょっと興味を持ち始めてたところでのBS放送ということで鑑賞に至りました。
邦画って、どうもセリフが聞き取りづらくて・・・字幕がついていたら、なお楽しめただろうなって事はさておき、すっかり引き込まれちゃいました。やっぱり画に引き込む魅力があるんですよね。
黒澤明監督作品って言うか、昔懐かしい見たことある俳優さん達の若々しい姿がエネルギッシュに感じられました。白黒作品なのに志村さんの顔色の悪さがヒシヒシと伝わってくるような・・・
自分の死期が近付いていることに気付き、自暴自棄になって歓楽街を豪遊するシーンも凄いです。自分のイメージする以上の昭和の風景がそこにありました。人でごった返しの夜の街。タバコの煙で霞みまくっている店内。もちろん、その時代の映画ですから、当たり前の映像なんだろうけど、インパクトを感じます。葬儀のシーンも昔はこうだったなと、妙に懐かしく思っちゃいました。
【ネタバレかな】
自分の寿命がもうすぐ尽きると知った時。
死への恐怖から自暴自棄になってしまうのも、よく解ります。
でも、その中で改めて自分の生について考える。
自分が生まれたのは何故?生存理由は?何故生きている・・・
何をしたのか?何ができるのか?何を残すのか?
人間に、もし価値があるとしたら・・・
自分は、その人が死んだ時に分かると思ってます。葬儀の席で、どれだけの人が集まり、悔み、悲しみ、話してくれるのか。多くの人に接し、多くの事を残し、多くの人の記憶に刻まれることが、生存の意義と感じます。「生きている」事が「生かされている」、人として人と関わる事が最高の価値ではないでしょうか。
自分にそれが出来ているとは思えません。価値ある人生を過ごそうとする気も無い、ただ息をしているだけの毎日です。何かを成そうとするエネルギーは、もう無いかな。
でも、なにかの機会で、何かあったときに、人の心に残る行動ができたらいいなって思ってます。
そんな事を想い起こさせてくれる一本でした。
葬儀の席で、故人の事を語り合う。時には蔑み、時には褒め称え、故人を懐かしむ。その中で、故人の偉業を思い知り、明日からの自分を奮い立たせようと決起した後・・・
何事も変わらなかった日常が描き出されるラストカットもまた、印象的でした。