「生きるの原作はゲーテのファウスト」生きる(1952) Masataka Nさんの映画レビュー(感想・評価)
生きるの原作はゲーテのファウスト
すでに気づいている人もいるかもしれませんが、「生きる」は内容がゲーテのファウストにそった筋になっています。主人公が飲み屋でメフィストフェレスみたいな人物に出会いますが、そのとき野良犬が入り口から入ってきます。これはファウストがメフィストフェレスに出会う本の場面のそのままの引き写しになっています。この映画を見るのにファウストを読んでいる必要はありませんが、筋立てや道具立てを理解するのには役に立つかもしれません。例えば、若い女工さんは、ファウストの中のグレートヘンを模したものでしょう。またファウストはその生涯の最後の仕事として、海を干拓しそれに満足して死を迎えます。これもドブ池を埋めたてて公園にするという形で映画にそのまま取り入れられています。その他類似点はいろいろあると思いますが、探してみてください。
ちなみに、映画「生きる」と「ファウスト」の関係に公に言及したものがなかなか見つかりません。知って見るのと知らないままで見るのとでは、どちらがいいのかは別にして、印象が変わってくる気もします。
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talismanさんのコメント
2023年4月3日
冒頭、病院の待合室で渡辺に色々とまくしたてる男、あれは悪魔だと思いました。胃ガンであれば医者は絶対そう言わず軽い胃潰瘍という、手術は必要ない、消化の悪いものさえ避ければ何を食べでも大丈夫。その悪魔の囁きがまさに現実のものとなってしまった!