「コクーン(繭)というよりどう見ても牡蠣殻だろう」コクーン Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)
コクーン(繭)というよりどう見ても牡蠣殻だろう
総合:55点
ストーリー: 40
キャスト: 60
演出: 65
ビジュアル: 65
音楽: 70
永遠の若さ・命は人間が追い求める永遠の主題の一つ。特に若さを失い体が動かなくなり老い先短いとなれば、それは本当に切実に感じられることだろう。
だが現代医学をもってしても未だにこの問題が解決される気配はない。そうなれば超現実的な反則技でもって解決するしかないわけで、それで穏健で知性的で友好的で光りながらふわふわ空を飛ぶ神々しい宇宙人が登場するわけである。若さを取り戻した年寄りたちが精神的にも若返り人生を楽しみだす。
この宇宙人の地球に取り残された仲間、一万年も海底でコクーンと呼ばれるカプセルの中で退屈もせずに待っていた絶大な体力・精神力の持ち主。しかしその割には、年寄り連中にちょっとプールの培養液から出されただけで宇宙へ帰還する旅に耐えられないほど体が弱ってしまう。死にかけの年寄り連中でも楽しみにするほどの旅にすら耐えられないなんて、いったいどんな弱体ぶりなんだろうか。
実際、コクーン(繭)というよりどう見ても牡蠣殻にしか見えないそのカプセルが開いたときに出てくる、もう光ることも空を飛ぶことも無い干からびた弱々しい宇宙人は、まるで養殖場から海底の泥の上に落ちて旬をすぎたまま放っておかれた牡蠣を開いて出てきた痩せた身そのまま。そして宇宙へ戻れる期待をさんざん持たせておいて、またまた海の底へ戻されるという放置プレイは、わざわざやってきた救出チームとしてはかなりのSぶり。すっかりやつれて皺だらけの老けた元同僚を見た途端、あまりの変貌ぶりに失望して一緒に故郷に帰るのが本当は嫌になっただけなんじゃないのかと、思わず彼らを問い詰めたくなる場面である。久しぶりに会ってすっかり不細工になっていたかつての憧れの人みたいな同窓会でよくありそうな話である。
そもそも一万年も放っておくなんて命の恩人である仲間に対していったい何の罰ゲームなのだろうか、そんな昔から地球にやってきて何をやっていたのだろうか、ウサギ小屋より狭苦しい牡蠣殻の中で何をやれば一万年も暇つぶしを出来るのだろうかと疑問は尽きない。そして一万年も牡蠣殻の中で放置されていた自分の仲間を宇宙に連れ返せなくなる原因を作った性質の悪い年寄りどもを、ためらいもなく仲間の代わりに連れ帰り永遠の命と若さを与えるという。もし干からびた同僚を連れて帰るのが嫌になったのでなければ、彼らの体の90%くらいは無料奉仕精神で構成されているに違いないし、彼らの辞書には恨みという言葉は存在しないに違いない。
この出鱈目な宇宙人の設定は必要なのかな。さんざん宇宙人の設定には批判的なことを書いたが、老いや人生を見つめなおしたりするのは面白い主題であると思うし、そこで永遠を求める者・愛する者を失い自分も自然の摂理に従うことを選ぶ者といった人生の選択を描くのは良かったと思う。だがどうも年寄り連中と宇宙人との関係や宇宙人の設定が少々無理がある。そこらあたりを見直してくれたらもっと良い作品になっただろう。