「名無しの人間離れした主人公で、異色のチャレンジングな西部劇」荒野のストレンジャー Kazu Annさんの映画レビュー(感想・評価)
名無しの人間離れした主人公で、異色のチャレンジングな西部劇
クリント・イーストウッド 監督による1972年製作のアメリカ映画。
原題:High Plains Drifter、配給:ユニヴァーサル=CIC。
西部劇ではあるが、かつて見たことがないタイプの不思議な、そして怖い映画であった。何と言っても、善人そうな村人達がかつて、正義を貫こうとする保安官をよってたかって虐殺したことが暴かれる展開が怖い。村人たちが皆で黒人を殺してしまう大島渚の「飼育」(1961)を思い出した。同様に、正義を抹殺する様な閉鎖的社会を糾弾しているのだろう。
それを、西部劇という勧善懲悪のエンタテイメント世界に持ち込んだのが野心的で挑戦的。
主人公の性格もかなりぶっ飛んでいる。異人種や小人には優しいが、彼にとって女はレイプするものみたいだし、躊躇なくヒトを殺し、圧倒的に射撃が速く正確で、残忍な方法で悪役を殺す。そして、人間離れしているというか、殺された保安官の幽霊と思われる様な描かれ方である。必ずしも成功していると思えないが、時代的影響として反戦運動や学園紛争が有る影響もあるのだろうか、利益を追求し正義感を失くした米国社会を糾弾する随分とチャレンジングな映画とも思った。
監督クリント・イーストウッド、脚本アーネスト・タイディマン、製作ロバート・デイリー、撮影ブルース・サーティーズ、音楽ディー・バートン、編集フェリス・ウェブスター、字幕川名完次。
クリント・イーストウッド The Stranger、バーナ・ブルームSarah、マリアンナ・ヒルCallie、ミッチェル・ライアンDave、ジャック・ギンクMorgan、ステファン・ギラシュMayor_Jason_Hobert、テッド・ハートリーLewis、ビリー・カーティスMordecai、ジェフリー・ルイスBridges。