劇場公開日 1973年3月16日

「スティーブ・マックイーンの魅力炸裂!」ゲッタウェイ(1972) Moiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0スティーブ・マックイーンの魅力炸裂!

2024年6月22日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

感想

スティーブ・マックイーンの黄昏れた漢の魅力炸裂
の作品。刑務所に収監中の孤高のアウトロー!ドク
マッコイ。美しい妻キャロル。大金強奪後の2人の
運命や如何に!?

自由とは自分勝手に生きることであり、他人の事は
どうでもいい。目先の幸せは真当な生き方では手に
する事の出来ない大金を(銀行強盗で)手に入れ、後
に何も残らないアメリカを捨ててメキシコへ逃亡す
るー。という、とても刹那的で逃避規制が働いてい
るある男女の人生を描いているジム・トンプソンの
原作を、孤高の人生観を描かせると天下一品の腕前
を披露するウォルター・ヒルが脚色をした。さらに
監督は「わらの犬」「戦争のはらわた」、そして本作、
次回作に「ガルシアの首」。殺しの美学を貫く映像
手法でバイオレンス映画の革新を果たした名匠サム
・ペキンパー。

ベトナム戦争で疲弊し、正しいことは何なのか。
国民が自信を失ってしまった社会の中でアメリカ国
内、古き良き西部も失われ、変わっていく。ヒッピ
ームーブメントで築かれてしまったフリーセックス
文化の害悪を揶揄し、鬱積するやりきれない想いや
壊れてしまった人間関係を再び見つめ直す視点を映
画の端々に感じる。ラストのエルパソのホテルでの
ベイノン一家と殺し屋ルディとの壮絶な死闘は緊迫
した雰囲気が満ち溢れ、衝撃的な暴力描写の連続で
ある。メキシコの国境越えに一役支う呑んだくれの
カウボーイ(「博士の異常な愛情」の保守主義代表カ
ウボーイ!コング役のスリム・ピケンズ)に旅暮らし
はもうやめて手を携えて2人で生きた方が良いと諭
され、すっかり改心してしまう2人が刹那主義の絶
頂期にあり現実逃避に病める当時のアメリカそのも
のであると今観ても思えた。

音楽はブラックコンテンポラリージャンルの重鎮で
当時新進気鋭の作曲家であった、クインシー・ジョ
ーンズ。人種の垣根を超えた当時のアメリカ世論を
反映した映画音楽での起用で、これがまたマックイ
ーンの黄昏た魅力とペキンパーの映像にベストマッチ。日本の音楽、テレビ制作関係者や映画制作者に
もかなりの影響を与えた事は間違いない。(個人的
な主観であるが大野雄二作品、松田優作や一連の
村川透監督作品等はスピリッツ的影響を受けている
と感じる。)

監督自身、この作品に不満があるという発言もある
ようであるが、スティーブ・マックイーンが兎に角
カッコ良いので。

⭐️4

Moi