「旧日本軍よりは理屈が通じる組織ではあったものの…」ケイン号の叛乱 KENZO一級建築士事務所さんの映画レビュー(感想・評価)
旧日本軍よりは理屈が通じる組織ではあったものの…
エドワード・ドミトリク監督作品としては
「ワーロック」位しか観たことは
なかったような気がするが、
軍艦における部下の反逆を描くという
「戦艦バウンディ号の叛乱」等にも共通する
内容の作品と知って初鑑賞した。
この映画、通信長大尉が自己保身のために
信念を曲げる経緯なども描かれたので、
一見複雑そうには見える内容だ。
しかし、
私には偏執症なのかは分からないが、
少なくとも船長は、
服装問題に気を取られての不適切艦船反転、
イチゴ紛失への行き過ぎた対処、
嵐の中での対応
等々で間違った指令を繰り返している人物
であることは明らか。
最後には真実にたどり着いたものの、
序列を優先するがごとくの
軍法会議の進捗には、
現代にも続いている誤った組織論を
感じるばかりだった。
また、主人公が誰なのかが明白では無い
ようなウエイトの置き方に、
自分の気持ちを誰に投影していいのか
分からなかったことも、
なかなかこの作品の世界に入りこむことが
難しかった原因だったかも知れない。
その関連では、主人公のようにも見える
新任少尉の成長譚にも見えないし、
彼の恋愛パートも主題とのリンク性も弱く、
むしろ全てカットした方が
良かったようにも。
総じて、邦画で軍隊内問題に迫った
「真空地帯」や「人間の条件」のような
非人間性や残虐性がまかり通るような
旧日本軍の組織内問題に比べれば、
当時の米軍内部はまだ理屈での判断を
活かせるレベルだったかも知れないが、
この映画の内容がピューリッツァー賞の
原作通りとしたら、
一人の人間性に原因を帰結させようとする
構図と、
その都度その都度の事例が
あからさま過ぎて、
原作自体が少し深みに欠ける内容
だったのではとの想像も巡った。
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