「タクシーが30分遅れただけで男と女の天と地はひっくり返る」軽蔑(1963) きりんさんの映画レビュー(感想・評価)
タクシーが30分遅れただけで男と女の天と地はひっくり返る
「『何 読んでんの?』と
夫に声をかけられた時に
この人と離婚しようと決めた」。
という三行の文章を読んだ。
実際、そんなものなのかも知れない。
理由不明の男女のお別れは、それは不条理劇と呼んでも構わないだろうが、
これが超現実主義。結婚の生ナマの姿と呼んでも、また構わないのだ。
半年前に我が営業所に入社した若きW君が 可哀想である。あまりにも周りの先輩たちから
「おまえ独身なのか、羨ましいなぁ」と言われ続けているので
「オレ、結婚への夢に冷めましたわー」とこぼしている。
ダメじゃん、先輩たち!
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本作、
こじれていく男女。
嫉妬と独占欲がなければ、愛は成就しないらしいが、
嫉妬と独占欲があったとしても、愛は成就しない。
「もしもあの時こうしていれば」が無い。
解決も正解も無い。
ゴダール。怖い。
「10年間、妻のいる自宅に戻らなかったユリシーズの物語」=オデッセイアと、この夫婦=ポールとカミーユの物語が、スクリーンに重ねられて語られていくのだけれど、
ホメロスのオデッセイアや、オルフェウスとエウリディーチェ、そして中東オリエントの伝承「エデンの園」のアダムとイヴ等々の、それぞれの《夫婦喧嘩》が
よくぞここまで飽きられもせずに、いまだに人類全般に読まれているものだ。
それは、哀しくも可笑しい、男女の真の姿だからだね。
だからゴダールは、この映像作品でも新しくて古い物語を描く。
懐かしきカプリ島。
絶景と言うべき島の別荘。
黄色のローブ、赤いカウチと青いソファー。
呻吟するポールとカミーユ。
ドイツ人映画監督のラングはオデッセイアの真意を語り、
そして男と女の成り行きを采配するアメリカ人のゼウス神=プロデューサーのプロコシュをば、人間たちは呪う。
BBの裸身が陽光に燦然と映えます。
神話のふるさと=地中海を舞台とした前衛なお芝居に、皆さん引き込まれること、請け合います。
若きW君、
きみに忠告しようね、
アフロディーテは、手が届かないから美しいと知るべき。
苦しいから、良いのだ。
それが人生の面白さだよ。
うふふ。
わざわざユスターシュ探してまでのコメントありがとうございました(笑)。まあ、消すなら消すでいいんですよ。とにかく、せめて警告くらいはしてほしいんですよね……。
Billyさん
いま見終わりましたよ。レビューでのご紹介ありがとうございました。
すっごく面白かったですね。
次はBillyさんも島の北側、マリーナピッコラのヌーディスト・ビーチに起こしください。
あの紺碧の海を前にすれば、服を脱ぎ捨てるのも当然と思うしかありません。